【社説】公務員人件費 増税の前に大胆に削れ『中日新聞』社説2011年10月1日付

『中日新聞』社説2011年10月1日付

【社説】公務員人件費 増税の前に大胆に削れ

 人事院が国家公務員給与の0・23%引き下げを勧告した。厳しい財政や震災復興の財源捻出を考えれば、より踏み込んだ人件費削減が必要だ。公務員制度の改革にも大胆に切り込まねばならない。 

 東日本大震災の影響で例年より二カ月近く遅れた今年の勧告は、月給を平均0・23%減額し、ボーナスの年間支給月数を三・九五カ月分で据え置く内容だ。政府が勧告通りに完全実施すれば、平均年収は一万五千円減の六百三十七万円となる。 

 人勧制度が争議(スト)権など労働基本権が制約されている国家公務員への代償措置であり、歴代内閣がほぼ例年、完全実施してきたことは理解する。 

 しかし、民主党政権は復興財源に充てるため今年六月、公務員給与を二〇一四年三月末まで平均7・8%引き下げる特例法案を国会提出し、継続審議となっている。 

 ねじれ国会で成立は厳しい情勢だが、野田佳彦首相は給与の引き下げ幅を勧告通りの0・23%にとどめず、特例法をまず成立させて7・8%削減を目指すべきだ。 

 すきあらば天下りをもくろむ高級官僚は別にして公務員の献身的な働きは称賛されるべきだが、公務員に対する国民の目は厳しい。 

 震災復興や社会保障の財源、財政健全化のために増税という形で国民に一層の負担を強いようとしている時に、公務員人件費を聖域化すべきではない。 

 いくら人勧が民間準拠とはいえ中小零細を含めた国税庁の民間給与実態調査では一〇年の給与所得者の平均年収は四百十二万円だ。国民の多くは官民格差の広がりを感じているに違いない。 

 7・8%削減は、給与や勤務時間などの労働条件を交渉で決める協約締結権付与と引き換えで連合系組合が受け入れたが、所属職員は全体の四分の一弱にすぎない。政府はほかの組合などからも同意を得る努力を怠ってはならない。 

 深刻な財政状況を反映できない現在の給与決定方式は限界にきている。人事院を廃止し、公務員庁などを設けて労使交渉で給与を決める公務員制度改革関連法案の成立を急ぐべきだ。 

 それにとどまらず、首相は民主党がマニフェストで国民に約束した公務員削減や出先機関統廃合による総人件費の二割削減にも踏み込むべきだ。規制緩和や大胆な権限移譲など制度の在り方にも切り込まねば、国民が切望する改革にはつながらない。増税の前にやるべきことは山積しているのだ。

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