来年度予算こそ歳出抑制の正念場だ『日本経済新聞』2011年9月22日付

『日本経済新聞』2011年9月22日付

来年度予算こそ歳出抑制の正念場だ

 政府・与党は震災復興に充てる2011年度第3次補正予算案の算段に躍起だが、12年度予算案のやり繰りは大丈夫なのか。そんな不安をぬぐえない。年末までの予算編成では、歳出抑制の覚悟が問われる。

 12年度予算案の概算要求基準が決まった。財務省は各省庁の要求を今月末に締め切る。菅直人前首相の退陣をめぐる混乱などが響き、1カ月遅れで査定作業が始まる。

 各省庁は復興費を除く政策経費を11年度当初予算に比べて一律1割削減しなければならない。一方、成長戦略などに重点配分する7000億円の特別枠を設け、削減分の1.5倍まで要求できるようにした。

 当初予算ベースでみた11年度の一般会計総額は過去最大の92.4兆円に膨らみ、新規国債の発行額が税収を2年連続で上回った。このままでは財政悪化に歯止めがかからない。政府が国債償還以外の歳出を71兆円以下、国債発行を44兆円以下に抑える方針を掲げたのは当然だ。

 復興財源の大半は最終的に臨時増税で手当てする。だが12年度予算案の主要経費は通常の税収や税外収入、国債の増発で賄わざるを得ないだろう。例年以上に強い覚悟で歳出を抑え、国債の膨張を食い止めないと、市場の信認を得られない。

 重要なのは歳出のメリハリである。子ども手当や高速道路の無料化に続き、農家の戸別所得補償や高校無償化の見直しも急ぐべきだ。歳出の削減を徹底し、成長基盤の強化やエネルギーの安定供給、超円高への対応といった重要分野の予算を確保する必要がある。

 政治主導で配分を決める特別枠の設定自体は悪くない。各省庁に一律1割の削減を求めるだけでは、歳出の大胆な組み替えは期待できない。むしろ特別枠の規模が小さいのではないかという印象も残る。

 しかし不要不急の予算が紛れ込むのでは困る。菅政権下で設けた特別枠は当初の1兆円超から2.1兆円に拡大したが、既存予算の付け替えなどを排除できなかった。特別枠がお手盛りの温床にならないよう、細心の注意を払うべきだ。

 社会保障費の効率化も急がれる。高齢化の進展などで自動的に増える1.2兆円の自然増を容認したのは問題だ。後発医薬品の使用促進などによる医療費の節約や年金給付の抑制に本気で取り組む必要がある。

 もちろん地方交付税も例外ではない。聖域なき歳出の抑制に取り組まないと、公共事業費や防衛費、政府開発援助(ODA)などを必要以上に削減しなければならなくなる。

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