関経連、絶滅が危惧される工学分野で提言/溶接も危ぶむ声『産経新聞』2011年8月27日付

『産経新聞』2011年8月27日付

関経連、絶滅が危惧される工学分野で提言/溶接も危ぶむ声

 関西経済連合会は、このほど「わが国の産業を支える基盤技術の維持に向けて 絶滅危惧分野における人材の育成・確保のための仕組みづくり」と題した提言書をまとめた。それによると、冶金・金属、電気、土木などの分野で研究活動の縮小・人材減がみられる一方、日本経済の国際競争力維持、東日本大震災の復興を推し進める上でこうした技術は不可欠だと指摘している。

 関経連では会員企業などにアンケート調査を行ったが、冶金・金属、土木、鍛造、化学、強電系、溶接の各工学分野で絶滅を危ぶむ企業が全体の半数強あった。また、これらの工学分野を維持するため具体的な取り組みを行っている企業は約30%にとどまり、大学などと共同研究を除いた取り組みを持続しているのは10%強に過ぎなかった。その一方、これらの工学分野が事業運営に必要だとするのは過半にのぼり、将来の技術者・技術スキルの不足・消滅に危機感を抱く声も多かった。

 ただ、これらの工学分野を維持していくのは企業単独では難しく、分野別に技術を承継できる仕組み、産官学連携による人材育成システムの構築、国策としての技術承継などを求める意見も多く寄せられた。一方、絶滅が危惧される工学分野に対し大学では、学生確保の狙いもあり先端分野を取り込んだり、学科名称を変更したりしている。大学運営も交付金・助成金が削減され厳しいことから、学生を確保できない学科は再編・廃止の対象となるためだ。さらに、大学の評価は論文の発表件数や特許出願件数に大きく影響されるため、研究の進展が見込めない分野は学生にも敬遠される傾向が強いとしている。

 絶滅が危惧される工学分野を維持するため、企業は社会人の再教育・技術承継に向けた取り組みを強化し、大学とも連携を強める必要がある。大学については、学生確保のため学科を維持する環境整備が必要で、「若者の理工系離れ対策」も含め人材を輩出し続ける機能を維持することが求められる。さらに、企業や大学だけでなく国が主導権を持って産官学の連携を強め、教育環境・教員・学生の3つの視点から人材を育成・確保していくことが必要である。絶滅が危惧される学科においても先端分野を取り込むこなど、日本経済の国際競争力強化・発展につながる視点で学部・学科を維持していく必要がある。

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