教職大学院開設3年 志願者確保が課題 上越教育大 教委との連携カギ『読売新聞』新潟版2011年8月22日付

『読売新聞』新潟版2011年8月22日付

教職大学院開設3年 志願者確保が課題 上越教育大 教委との連携カギ

 上越教育大が2008年4月に県内で唯一の教職大学院*を開設してから、3年が経過した。学部新卒者と現職教員を対象に、実習を重視した学校経営や指導方法を教育し、教科教育や学校運営の中核となる教員を養成するのが狙いだが、志願者の安定的な確保をどう図っていくかなど、課題も見えてきた。大学院運営で支援を受ける教育委員会との緊密な連携が成否のカギになりそうだ。

 上越教育大で7月20日、ICT(情報通信技術)などを活用した教科指導案を検討する講義が開かれた。教職大学院の1、2年生約50人が7班に分かれ、小学3年で習う昆虫や植物の生態をテーマに、分かりやすい指導方法について意見を交わした。

 9月から現場での実習が始まるとあって議論が盛り上がり、各班からは「昆虫の標本を見せるのが好ましい」「パソコンを使ってはどうか」など具体的な提案が出た。

 上越教育大では、教職大学院に「教育実践」(定員30人)と、「学校運営」(同20人)の二つのリーダーコースを設置。両コースとも2年間学び、おおむね4月から8月までは大学での講義が中心で、9月から約3か月間、学校現場での実習に臨む。修了者には「教職修士」の学位が授与される。

 学生は実習中も頻繁に大学に戻り、現場で直面した課題について教授らから指導を受け、解決を図ることができる点が、大きな特徴という。

 学校運営2年の田中枝利子さん(43)は、教職大学院への入学前、上越市立大町小学校で教壇に立っていた。中堅教員として学校運営や危機管理を学ぼうと志願し、県教委から派遣された。

 1年目は、同市立中郷小・中学校で実習し、児童や生徒、保護者を対象にした学校評価に関するアンケートで、質問項目を改善。9月からの実習では、同市立春日新田小学校で「規律ある学校運営」を課題に取り組む。

 上越教育大の従来の大学院修士課程を修了している田中さんは、教職大学院について「教師陣に現場経験者が多く、現場の状況に応じた的確な指導を受けられるメリットがある」と強調。「修了後、現場に戻ったら、大事な仕事を任せてもらえるよう研さんを積みたい」と意欲を見せる。

 教職大学院の入学者は、初年度の08年度に32人と定員の50人を割り込み、文部科学省から改善指導を受けた。その後、主に東日本の教委に現職教員の派遣を売り込み、09~11年度には入学者が51~62人といずれも定員を上回った。そのうち、県、新潟市の両教委からの現職教員が13~32人と、全体の半数近くを占めている。

 現職教員の入学だけでなく、実務家教員の派遣や実習の場となる学校の確保の面でも、教育委員会の協力が欠かせない。上越教育大は県、新潟市の両教委と連携推進協議会を設け、定期的に意見を聞いて教育レベルの向上を目指している。

 今後の志願者の確保を左右しそうなのが、現職教員の修了後の処遇だ。県教委は「適正に配置している」と説明するだけで、明確に方針を示していない。

 教職大学院統括担当の広瀬裕一教授は「教職大学院を修了した教員らは学校や教委で即戦力としてリーダー的役割を担っており、一定の成果は出ている。上越教育大の教育モデルを、全国にアピールしていきたい」と話している。

*教職大学院 法科大学院などと同じ専門職大学院で、山形大や群馬大など25大学に開設。修業年限は標準2年。研究中心の従来型大学院に対し、教員経験者ら実務家教員を4割以上配置し、実習重視で指導方法や学校経営の実践的内容を学ぶ。学校内でのリーダー養成など、現職教員の研修の場としても活用する。

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