科研費:減額の可能性 大震災復興財源確保で 大学に不安広がる『毎日新聞』2011年8月22日付

『毎日新聞』2011年8月22日付

科研費:減額の可能性 大震災復興財源確保で 大学に不安広がる

 東日本大震災の影響で、文部科学省の「科学研究費補助金(科研費)」が減額される可能性があり、大学などの研究者に不安が広がっている。特例公債 法の成立遅れで予算執行が危ぶまれ、採択額の7割が7月末までに支給されたが、今後の復興財源の手当て次第では、残額の削減を求められる可能性があるとい う。【西川拓】

 科研費は、もっとも一般的な競争的研究資金で、分野を問わず研究者が研究計画を申請し、審査を経て採択される。今年度は2633億円が予算計上さ れ、うち単年度で消化する1780億円のうち1534億円が約4万3000人に配分されることが決まっていた。しかし、赤字国債発行に必要な特例公債法の 成立がずれ込んだため、文科省は分割支給を決め、7月上旬に研究者に通知。「復興財源確保のため歳出削減を求められる可能性がある」として慎重な執行を求 めた。

 削減されれば、大型装置の購入を計画していた研究者にとっては、大打撃だ。研究を計画通りに進められなくなり、学生の卒業研究などに影響が出るこ とも考えられる。ある国立大の男性准教授は、今年度分の科研費で約2000万円の計測装置を購入する予定だった。しかし、7月末までの支給額では、数百万 円も不足する。「仮にこのまま3割減ならば、(不足分は)寄付金をかき集めても補える金額ではない。装置を購入できなければ、研究計画を大幅に見直さざる を得ない」と話す。

 関東地方の別の国立大教授は「見通しが立たないのが一番困る」と困惑している。同様の科学研究費を支出している厚生労働省は通常通り採択者への配分を終えているという。文科省学術研究助成課は「何とか10月ごろまでに(満額支給かどうかを)見極めたい」と話している。

Proudly powered by WordPress   Premium Style Theme by www.gopiplus.com