福祉の専門家育て10年 認知度不足に課題『大分合同新聞』2011年8月17日付

『大分合同新聞』2011年8月17日付

福祉の専門家育て10年 認知度不足に課題

 大分大学大学院の福祉社会科学研究科(大分市旦野原)が設立10年目を迎えた。“福祉のエキスパート”の養成を目指して社会人を積極的に受け入れ、これまで71人を病院、福祉施設や行政の現場に送り出した。ただ、認知度不足もあって学生の募集に苦労。「自治体にもPRして行政職員の入学希望を掘り起こし、県内の福祉行政の底上げにつなげたい」としている。

 同研究科は2002年4月、国立大学(当時)としては初めて、社会福祉学を基礎にした学部の系列にない独立大学院として開設された。2年制の修士課程のみで1学年の定員は12人。ソーシャルワーカーのリーダー、福祉施設の管理者、自治体の福祉関係職員などの養成を掲げている。

 1期生で別府大学文学部准教授の林真帆さん(49)=別府市=はリハビリ病院でソーシャルワーカーとして勤務しながら学んだ。「病院内での役割や、ソーシャルワーカーの存在意義を周囲にどう伝えるかと悩んでいた時で、実力をつけようと入学した。理論を学び、より深く患者の言葉や背景を理解できるようになった」と振り返る。

 研究科のカリキュラムは現場での実践を支える理論や、福祉に関わる行政、企業、地域などの幅広い課題を学べる内容。調査研究にも力を入れている。講義は社会人が学べるように午後6時以降が主体。週3日程度の通学で必要単位を習得できる。2年分の学費で最大4年かけて学べる長期履修制度も03年度から導入した。

 一方、入試は毎年、最初の募集で合格者が定員に届かず、2次、3次の追加募集を実施している。来年度入試(出願は22日まで)に向け、入学希望者の掘り起こしに努めているのが現状。同研究科長の平塚良子教授(ソーシャルワーク論)は「福祉の現場で科学的、論理的に考え、実践できる人材を育てたい」と入試への挑戦を呼び掛けている。

福祉社会科学研究科の入学者

 これまでの入学者105人のうち、社会人は68%を占める。留学生は11%で、他は学部から進学した学生。社会人の入学時の職業は福祉施設、病院、NPOなどの福祉系が69%。県、市などの公務員(公立病院勤務を含む)が13%だった。

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