大阪府育英会:貸し付け世帯収入270万円以下に『毎日新聞』2011年7月7日付

『毎日新聞』2011年7月7日付

大阪府育英会:貸し付け世帯収入270万円以下に

 「大阪府育英会」の大学入学資金貸付制度で、今春貸し付けを受けた学生の世帯収入が、住民税(所得割)非課税となる年間約270万円以下の水準に まで下がっていることが分かった。長引く不況で応募が殺到する中、所得の低い順に貸し付けているためで、過去にない異例の事態。日本学生支援機構(旧日本 育英会)の奨学金も同様に採用が厳しくなっており、「教育の機会均等が失われる」と支援拡充を求める声が上がっている。【平野光芳】

 制度は入学前に28万円(生活保護世帯は53万円)を上限に無利子融資するもの。毎年の予算は約6億6600万円分で、2500人前後に貸し付け ているが、リーマン・ショック以降の急激な景気悪化などで、08年度に3581人だった応募は10年度に4306人に増加。これに伴い、貸し付けの際の年 収基準(夫婦と子ども2人の世帯の場合)は、08年度の約360万円から、昨年度は約270万円以下にまで絞り込んだ。

 大阪市内の自営業の女性(52)は、長男のために育英会に応募したが、「困窮度の高い人から優先的に採用したため、不採用」との通知を受けた。毎 月の収入は夫婦共働きで25万円ほど。「商売が厳しく預金がほとんどない」と生命保険を担保に約30万円を借り、何とか入学金をまかなった。

 育英会に出資する府私学・大学課は「府の財政状況が厳しい。地方は高校生を、国は大学生を支援するという役割分担の枠組みもある」と、採用枠や予算の拡大に難色を示す。

 日本学生支援機構の大学生向けの奨学金も、同様の状況。昨年度の第1種奨学金(無利息)事前募集では、約18万人が「評定平均3.5以上」「年収 約880万円(4人家族の目安)以下」といった応募資格を満たしていたが、実際に採用できたのは2割の約3万8000人にとどまった。同機構によると、 09年度に第1種奨学生に採用された家庭の平均年収は約340万円だったという。

 貧困問題に詳しい佛教大の金澤誠一教授(社会保障論)は「生活保護に至らないボーダーラインの貧困層の負担が重くなっている。教育の機会平等が失われ、貧困や格差が固定化される。ニーズを満たす予算を確保すべきだ」と指摘する。

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