小さな保育所 移転先は大学 『朝日新聞』多摩版2011年6月26日付

『朝日新聞』多摩版2011年6月26日付

小さな保育所 移転先は大学

 移転先が見つからず、一時は継続が危ぶまれた小金井市のNPO法人「回帰船(かいきせん)保育所」が6月、東京農工大小金井キャンパス(小金井市)内に移転し、再出発した。女性研究者が働きやすい環境づくりを進める同大が敷地を無償貸与した。25日に「お披露目会」を開き、新たな門出を祝う。

 回帰船は1974(昭和49)年開設。「働くこと」と「子育て」の両立を探る団塊世代の親たちが共同で始めた小さな保育室が出発点だ。97年に中町4丁目に移転。築50年以上の民家を借り、大家族のような雰囲気で、のびのびした保育を実践してきた。

 「異なる年齢の子どもたちが一緒に過ごす時間を大切にしています。小さい子は大きい子を追いかけるように成長し、大きい子は小さい子をいたわる心が育まれるんです」と理事長の安藤能子(よしこ)さん(60)。近くの河原や原っぱなどで「外遊び」をふんだんに採り入れ、保育士と保護者、OBの交流も活発だ。

 しかし数年前、都が保育室制度の廃止を決めたことなどで存続の危機を迎える。認証保育所の指定を得るには手狭だったからだ。

 保育士の村田陽紀(はるき)さん(44)らが新たな物件探しにとりかかり、ちらしを配って協力を呼びかけた。しかし「現在地に近い90平方メートル以上」などの条件に合う物件が見つからなかった。

 そのちらしが農工大関係者の目に留まった。女性研究者の支援モデル育成事業に取り組む同大は、アンケートに基づき、学内に保育所を設置する方針を固めていた。「回帰船」は近所にあり、教職員や留学生らの子どもを預かった実績もある。「ぜひお会いしたい」と声がかかり、無償貸与が決まった。

 認証保育所の指定も得て、学生寮近くの約850平方メートルの土地に木造平屋建ての自前の新園舎が完成。1日に移転を済ませ、今は18人の園児が通っている。7月からは大学関係者の子どもも入る予定だ。

 「ようやく新たなスタートを切ることができた。大学を始め、支援してくれた方々に感謝したい」と安藤さん。同大の宮浦千里学長補佐は「欧米の大学はたいていキャンパス内に保育所があるが、日本はまだ少ない。回帰船とよりよい協力関係を築きたい」と期待している。(三沢敦)

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