『朝日新聞』2011年06月24日付
大学寮新設 個性競う
数多くの大学が集中する多摩地域で、寮を新設する動きが相次いでいる。学生寮といえば、安い、でも古い、人間関係も煩わしい……と敬遠されがちだったが、今どきの寮はイメージを一新。学びの一環としての考え方を明確にし、かつ「おしゃれ」なのだ。
◆留学生と設備共有「家族みたい」
中央大
JR中央線豊田駅から歩いて10分弱。白壁の建物に芝生の庭、木製のデッキ……。中央大(八王子市)が今年3月に整備した初の国際寮には、おしゃれな雰囲気が漂う。日野市の多摩平団地を業者がリノベーションし、その1棟を丸ごと寮として借り上げた。
留学生に住む場所を提供するとともに、国際交流の場として活用できないかと考えたことがきっかけだ。シェアハウス方式が特徴で、原則として交換留学生と私費留学生に日本人学生を加えた3人がひと組となり、ミニキッチンやトイレを共有する。それぞれの個室が共有部分につながり、コミュニケーションを図りやすいようになっている。
法学部3年生の宮腰朋秀さん(22)は、4月にアパートから移り住んだ。「日本にいながら、外国の人と話す機会をもっと増やしたいと思った」という。シェアする仲間は中国とタイからの留学生。「友だち関係からさらに進んで、家族みたいになれるところがこの寮の良さです」。英国から留学しているトビー・ニコルスさん(20)も「ここの仲間は家族のような感じがする」とお気に入りの様子だ。
日本の学生の賃料は月5万円で、64人まで入居できる。東日本大震災の影響で留学生の入居が思うように進まなかったものの、すでに約40人が暮らし、秋以降は満員になることも見込まれる。
国際交流センター事務室の青柳伸也副課長は「中央大では学生をどんどん海外に送り出す方針を掲げており、その土壌づくりにもつなげたい」と言う。
◆1・2年生対象「学ぶ場」
国際基督教大
国際基督教大(三鷹市)は昨年3月に欅(けやき)寮、今年3月には銀杏(いちょう)寮と樫(かしのき)寮を相次いで整備した。同大は寮生活を教育の一環に位置付けており、大学院生や短期留学生向けも含めれば、11棟の寮がある。定員は計674人。全学生の約5分の1が寮に入ることができる。
新しい三つの寮は、1~2年生を対象にした点が特徴だ。大学生活にまだ慣れきっていない時期に共同生活を経験すれば、吸収するものもより多くなるという考えからだという。
新寮の寮費は月5万4千円。学生部副部長の木部尚志教授は「少子化が進む中、他者と一緒に住む経験を持つことはとても大切です。他の人への配慮や、問題が起きた時の解決方法を身につけられる」と意義を強調する。
寮の拡大に伴い、同大は昨年、寮の運営などを専門的に担当するハウジングオフィスを設置。新寮には夫婦の管理人がひと組ずつ住み込み、学生の心身の健康管理にも気を配っているという。
◆女子専用「数増やしたい」
電気通信大
従来の教職員寮を改修し、女子専用の寮を昨年4月に整備したのは、国立大学法人の電気通信大(調布市)。理系の単科大である同大は、学部、大学院を合わせて女子の割合が約8%と極端に少ない。寮の新設をアピールして女子を増やし、大学をさらに活気づけようという作戦だ。
定員は20人。寄宿料はひと月4300円と格安に設定している。阿部浩二・学生支援センター長は「志のある優秀な学生にこの大学を選んでもらうため、施設の整備をしっかりやっていることを広く伝えたい」。同大では女子トイレも改修したという。
(大西史晃)