談話 労働基本権制約下の一方的な賃金引き下げは認められない――賃金引き下げ法案、公務員制度改革関連法案の閣議決定にあたって2011年6月3日 日本国家公務員労働組合連合会中央闘争委員会

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談話
 労働基本権制約下の一方的な賃金引き下げは認められない
 ――賃金引き下げ法案、公務員制度改革関連法案の閣議決定にあたって

2011年6月3日
日本国家公務員労働組合連合会中央闘争委員会

 政府は本日、国家公務員の給与を向こう3年間にわたって10~5%削減する賃金引き下げ法案と、公務員制度改革関連法案を閣議決定した。

 国公労連は、公務員労働者の基本的人権を踏みにじり、極めて乱暴な手続きで閣議決定を強行した政府に対し、満身の怒りを込めて断固抗議する。震災を口実に、憲法で定められた権利やルールを無視した菅内閣の暴挙は、「労使の信頼関係」を破壊し、今後の行政運営にも支障をきたすことは必至であり、政府はその責任を負わなければならない。

 5月13日の提案以降、国公労連は一貫して、(1)財政事情悪化の責任を公務員に転嫁する総人件費2割削減に道理も根拠もないこと、(2)公務員賃金の引き下げがデフレを加速し、経済をいっそう冷え込ませて復興にも悪影響を与えること、(3)震災からの復旧復興を含め、全国で行政を支え奮闘している公務員の士気を下げること、(4)労働基本権が制約されている下で現行制度にもとづかない賃金引き下げは憲法違反であること、などを主張し、提案の撤回を要求してきた。

 しかし、政府はこの間の交渉で明確な根拠を示すことなく、6月2日に「議論を続けても平行線の可能性が強い」と交渉を打ち切り、一部労働組合との合意を根拠に閣議決定を強行した。

 公務員制度改革関連法案をめぐっても、人事行政の中立・公正性を担保する制度と機能の不十分さをはじめ、労働組合の認証制度や管理運営事項による交渉制限、内閣の事前承認規定や仲裁裁定の位置づけなど、団結権や協約締結権を制約する重大な問題が解消されていない。

 また、超過勤務命令に係る労使協定を排除するなど、勤務条件法定主義を口実とした詳細な法定事項は、憲法やILO条約に保障された基本的人権にはほど遠く、名ばかりの「自律的労使関係制度」となりかねない。

 今回の閣議決定は、消費税増税など新たな国民負担増に向けた露払いであり、全ての労働者・国民に対してかけられた攻撃である。これを許せば、問答無用で社会保障の切り捨てなど憲法に保障された国民の基本的権利はないがしろにされ、日本経済と国民生活の安心・安全の破壊が進行することは明らかである。

 国公労連はこの間、全国各地で自治労連、全教と公務三単産統一の運動を積み上げるとともに、民間労働組合や多くの団体との共同と連帯を築いてきた。こうしたとりくみによって、世論は確実に変化しつつあり、一気に国民的な理解と共感をかちとる条件は広がっている。

 たたかいの舞台は国会段階に移ったが、引き続きいっそう広範な労働者・国民のみなさんと手を携え、すべての労働者の賃金底上げ、雇用の安定確保などをめざす課題と一体で、賃金引き下げ法案の廃案と公務員制度改革関連法案の抜本修正を求め、全力で奮闘するものである。

以上

 賃下げ法案閣議決定に対し、人事院が談話を発表

 政府からの賃下げ提案を受け、国公労連は人事院に対して「代償機関たる人事院の使命と役割を踏まえて毅然と対応すべき」との申し入れを5月17日に行いました。加えて、各ブロック国公でも人事院地方事務局に対して、同様の申し入れを行い人事院の姿勢を追及してきました。

 そうしたとりくみの結果、人事院は閣議決定にあたり、以下の談話を発表しました。

人事院総裁談話

  平成23年6月3日

  人事院総裁 江利川毅

 国家公務員の給与減額支給措置についての法案が閣議決定されました。

 国家公務員の給与については、国家公務員法第28条により、人事院は労働基本権制約の代償機関として、国会及び内閣に対して、給与が社会一般の情勢に適応するように報告・勧告を行い、それを踏まえて最終的に国会が決定する仕組みとなっています。

 今回の給与減額支給措置は、我が国の厳しい財政状況及び東日本大震災に対処する必要性に鑑み、現行制度の下で「極めて異例の措置」として行うものとされていますが、労働基本権が制約された状況下において国家公務員法第28条の定める手続によることなく、給与の減額支給措置を行おうとするものであります。また、法案の閣議決定に至る過程では、政府と職員団体との間で交渉が行われましたが、一部の職員団体との間で合意に至ったものの、反対を表明している職員団体があるほか、職員団体に属していない職員も多数おります。したがって、このような給与減額支給措置については、遺憾と言わざるを得ません。

 なお、今回の給与減額支給措置は平成25年度末までの約3年間の措置とされていますが、国家公務員法第28条においては、人事院は、少なくとも年1回、国家公務員の給与について検証し、必要な報告・勧告を行うことが求められており、今回の給与減額支給措置が行われる間、労働基本権制約の代償措置が本来の機能を果たさないことにならないかとの懸念があります。

今後、国会において、これらの点も含め、慎重な御審議が行われることを期待いたします。

 人事院は、本年の民間給与実態調査を東日本大震災の影響を受けて例年よりも遅れて実施することとしましたが、今後、鋭意作業を行い、国会と内閣に必要な報告・勧告を行うという国家公務員法に定められた責務を着実に果たしてまいります。

以上

 

 

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