『読売新聞』2011年5月31日付
山梨大に防災研究拠点 東海地震を想定備蓄、孤立化対策に焦点
山梨大の防災研究や人材育成拠点「地域防災・マネジメント研究センター」が30日、設置された。
中部電力浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の停止理由となった「東海地震」を想定し、今後2年間で準備が出来る防災対策に絞り込んで研究する。記者会見した鈴木猛康センター長は「東海地震と東南海、南海、日向灘の地震が連動したり、震災後に豪雨が来たりと、想定を超える事態は必ず起こる。危機管理体制を整えたい」と話した。
センターは同大工学部土木環境工学科の付属機関として設立。研究者は16人。本来の研究領域が県外にある研究者についても当面、県内の事例に研究を集中させる。
特に100年から150年の周期といわれる東海地震は、前回発生(1854年)から150年以上経過しており「いつ発生しても不思議ではない」(鈴木センター長)ため、研究を急ぐ。防災施設などハード面の整備ではなく、地域防災計画の内容や孤立化への備え、情報伝達方法の確立などソフト面を中心に検討する。
具体的には、震災で東京、長野、静岡への陸路が分断され、甲府盆地が孤立化した場合に必要な燃料や医薬品などの備蓄物資の量を検討したり、土砂災害で峡南地域などの中山間地の集落が孤立化した際の対策を研究したりする方針だ。
また、鈴木センター長は、「県では近年、災害対策本部が設置されておらず、先進県と比べ防災知識が不足している」と指摘。防災教育を強化するため、「大学の中立性をいかし、県や市町村、報道機関、NPOや住民組織などで作る防災人材ネットワークの仲介役を目指す」としている。
センターの運営委員会には、県防災危機管理監や県土整備部長らが入っており、今後、センターと県庁の連携を推進する。センターは県や市町村と毎月、会合を開き、研究成果の公開や意見交換を行う予定だ。