福井大学に低炭素研究拠点 産官学連携で事業化狙う『電気新聞』2011年5月26日付

『電気新聞』2011年5月26日付

福井大学に低炭素研究拠点 産官学連携で事業化狙う

 低炭素社会実現とエネルギー源多様化を目的に福井県、福井県経済団体連合会、福井大学の3者が計画してきた産官学共同研究拠点「ふくいグリーンイノベーションセンター」が福井市の福井大学文京キャンパス内に開所した。リチウムイオン電池や燃料電池試作設備、ナノめっき用クリーンルームなど最先端の機器類を備えた施設で、ここを活用し次世代のエネルギー関連技術を創出、事業化につなげる。生み出した成果は地域企業に移転。福井県を「スマートエネルギーデバイス産業の集積地」(福井大産学官連携本部)にすることを目指す。

 「東日本大震災によってエネルギー問題、特に電気の安定供給と(原子力発電の)安全など、社会的なファクターが絡み合っている状況だ。科学技術の問題は科学技術でしか解決できない」

 18日、福井大で行われた開所式に出席した西川一誠知事はこう語り、センターが果たす役割に期待した。これに対し福井大産学官連携本部の山本暠勇本部長は「新エネルギー、省エネルギーに関わる研究開発を加速させる。使命はまず、成功例を出していくことだ」と決意を示した。福田優学長も「福井地域の技術力向上、産業発展に寄与していきたい」と話した。

 センターは、09年度の補正予算を原資にした科学技術振興機構(JST)による「地域産学官研究拠点事業」に県、県経済団体連合会、福井大の3者が応募したところ採択され、開所に至った。同事業は科学技術を地域発展の原動力にすることを目的としたものだが、政権交代により、事業仕分けの対象になった。そのため当初の規模より予算は縮小。3者の提案内容も修正を迫られるなど紆余(うよ)曲折を経たという。

 センター内に備えられた約30の機器類はJSTから無償提供された。施設内は大きく(1)事業化に近いシステムを実験する「試作ライン」(2)先端計測機器などの共同利用スペース(3)産官学の人材がコミュニケーションを図る交流スペース--に分類されている。センター内の様々な実験・試験設備は低コストで利用することができる。

 例えばリチウムイオン電池試作設備の利用料金は1時間当たり160円、燃料電池性能試験装置は同110円などとなっている。自前で設備を導入できない中小企業でも、エネルギー関連技術への関心、参入意欲が高ければ利用しやすい拠点といえる。

 地元産業界も熱い視線を注ぐ。開所式で県経済団体連合会の川田達男会長は「県内の中小企業は(センターに配備されたような)機器を自前で持つのは難しい。センターで行う先端研究は、新たな産業創出を担う人材育成につながるだけでなく、中小企業の育成にも寄与する」と語った。

 

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