給与削減問題で政務官交渉(2回目)政府側、1割カット等の根拠示せず 国公労連速報 2011年5月20日《No.2549》

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国公労連速報 2011年5月20日《No.2549》

給与削減問題で政務官交渉(2回目)

政府側、1割カット等の根拠示せず

 国公労連は20日、自治労連、全教のメンバーも含め、公務員給与削減問題で2度目の総務省政務官交渉を実施しました。

 冒頭、給与削減問題に関し、内山政務官は財政事情に関わる資料数点を示すとともに、前回宿題となった事項も含め、改めて次のように回答しました。

 ● 1割カットの根拠 : 国家公務員の給与削減は昨年11月の人勧取り扱い決定段階ですでに表明していたもの。その後の大震災への対処からさらなる財政支出が必要となった。捻出分は復興財源にも使われる。「1割」の設定根拠としては、地方自治体による給与削減への取り組み状況も参考にした。

 ● 復興財源との関係 : 第1次補正では、すでに成立していた予算についても思い切った見直しを行った。今後さらなる歳出削減は不可避であり、国家公務員人件費も例外ではない。今回の措置は勧告制度のもとできわめて異例の時限的措置であるが、自律的労使関係制度を先取りする形で十分話し合ったうえで、一定期間引き下げをしたいと考えており、理解と協力を願いたい。

 ● 削減の影響 : 削減は公務員の士気に影響するという意見は分かるし、職員の皆さんが復興支援で苦労されている中で心苦しい提案ではあるが、厳しい財政事情を理解の上ご協力をお願いしたい。地域経済や景気への影響は一般論として否定できないが、削減分は復興対策の財源に回され、政府全体の財政支出による景気のプラス効果も期待できる。

 ● 地方公務員給与等への波及 : 地方公務員の給与は地公法の趣旨を踏まえて、それぞれ条例で決められるものであり、国家公務員と同様の措置を求めることも、そのための財政措置をとるつもりもない。独立行政法人の給与については各法人の労使交渉で決定されるものだが、業務が公的性格をもつこと、運営費の多くを国庫に依存している点も踏まえつつ、自律的労使関係の中でしっかり議論してほしい。

 この回答に対し、国公労連の岡部書記長は「組合の主張とかみ合わない回答だ。公務員給与カットで財政支出が好転する保障もないし、3年間で財政規律が確立すると考えているのか。そもそも今回の措置は危機的な財政事情に至った責任を職員に転嫁するようなものだ。補正予算でマニュフェストの見直しにも踏み込んだことをみても、マニュフェストはすでに破綻している。総人件費2割削減に固執するより、米軍思いやり予算や政党助成金に手をつけるべきではないか」、「今回の交渉は自律的労使関係制度の先取りだというが、現状は人勧制度の下にある以上、交渉の法的根拠を明確にすべきだ。新たな労使関係が確立されるまでの間は、政府によって賃下げが強行されても組合は対抗手段がないこととの関係はどう説明できるのか」などと回答内容に強い不満を表明しました。

 それに対し、政務官は「財政健全化と震災関連費用の捻出のため、細かいものでも出し合って助けるためのものであり、財政状況の現状の理解をお願いしたい。3年間の時限とするのは、3年経てば労使交渉で給与等が決められるようになることを踏まえたもの。マニュフェストが現状とそぐわない面はあり、何が何でも2割=1.1兆円の人件費削減をというのは無理だ。職員の生活もあり、削減されても抗弁できないということも認識している」と再回答。さらに村木人事恩給局長は「3年間の意味は、給与引き下げと平行して自律的労使関係制度確立関連の法案を出すが、平成25年以降は労使交渉と協約によって給与等を決めてもらうことを念頭においたもの。また、3年程度は震災復興に関する様々な政策が必要になり、歳出もかさむことも踏まえた」と補足説明しました。

 岡部書記長はさらに「今回の交渉は勧告制度の下でのものであり、政府が強行しようとすれば組合に対抗手段がないまま、一方的に決定できることになる」と強調しながら、「心苦しいというなら、提案を撤回するのが筋で、増税論議がでている中、このままでは公務員は二重三重の負担を強いられることになる」、「定員削減が続いてきた結果職場の状況がどうなっているかをよくみるべきだ。窓口の繁忙、定員外職員の増大、ただ働き超勤などのなかで、職員は全体の奉仕者としての使命感から行政を支えている。災害復興の気持ちもだれにも負けない。そうした人たちに対して賃下げ提案とは何事か。まさに使用者責任の放棄ではないか」と主張し、政府側の姿勢を質しました。

 それに対し、まず人事恩給局長が「現行国公法では、交渉はできるが協約締結はできない。しかし、交渉で何かを決めることまでは否定されていない。その意味で、今回のやり方は臨時・異例のものと理解してやっている。そのような例は過去に唯一、昭和57年の人勧凍結の際に労使で話し合った経緯がある。このときは最終的には政府として決断し、国会で判断してもらった。不調の場合、(紛争)調整の制度がないのは確かだが、まさに臨時・異例の対処として臨時・異例の方法をとらざるを得ない。最終的には国会で判断する」と補足説明。政務官は「被災地でご苦労されている公務員の大変な思いはよく分かるが、それに対してはせいぜい超勤手当をしっかり支給することを検討することぐらいしかやりようがない」とも回答。

 組合側は「人勧制度による賃金の上下であれば、職員の士気が左右されることはない。しかし、阪神淡路大震災時のように復興財源の将来見通しも示されないまま、単年度で細切れに財源措置され、とにかく大変なのでという姿勢では到底受け入れられない」、「今回の提案を被災地で苦労している職員・教員に対して正面から説明する構えで交渉に臨んでいるのか。公務員にとっての復興貢献は、給与の1割を差し出すことではなく、本来の職務を全力で遂行することが本筋。そのために公務員を激励することが、国民の公務員への期待に応える政府の役割ではないか」、「公務員の賃金削減の影響については、昨日労働総研による試算を公表。削減は625万人に影響し、10%削減で家計の支出で2.6兆円減、GDP3兆円減、税収5400億円減となる。 復興による巨額のインフラ整備も主として大手ゼネコンが受注し、労働者の賃金や末端の国民にまで回らないことはこの間の経験でも明らか。内部留保の活用も含め真に国民経済に貢献するやり方は何か、ということについても、政府代表と議論しているつもりであり、政務官はその議論から逃げるべきではない」などと主張。

 これに対して、政務官は「職員ががんばっていることは分かるが、家も仕事も失いもっと大変な人もいる。少しずつでも力を出してほしいとお願いしている」、「この交渉での私の立場は給与の1割削減について何とか理解していただくために真摯に話し合うという役割。財源確保のアイデアは別の機会に国の方に提案していきたい」と回答。さらに人事恩給局長は「経済へのマイナスの影響は否定できないが、その規模についてはいろいろな意見もある。公務員給与は経済の動向とは一応別の話として議論し、経済への影響がある場合は政府全体の施策で別途やるべきというのが基本的な考え方だ」と補足回答しました。

 最後に、岡部書記長は「財政再建に向けた資料も方針もださないままで、賃金の削減だけはやらせてほしいという提案では到底納得できない。引き続き我々が納得できる理由や根拠の提示を求めておく。また、各現場で汗を流している職員の声を直接聞いてもらうために各単組代表を交えた交渉の場を検討すること。すでに出口は決まっているかのような報道も一部にあるが、合意のないまま一方的な見切り発車は到底認められない」と強く申し入れ、本日の交渉を締めくくりました。

                                               以上

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