九州大学が入試「女性枠」を撤回 「差別」批判受けて『朝日新聞』2011年5月20日付

『朝日新聞』2011年5月20日付

九州大学が入試「女性枠」を撤回 「差別」批判受けて

 九州大学(福岡市東区)は19日、2012年度の一般入試から理学部数学科の定員に「女性枠」を設ける計画を撤回すると発表した。女性研究者を増やす目 的を掲げていたが、「男性への差別だ」との批判や「違憲のおそれ」の指摘を受け、この枠で合格する学生への影響も考慮した。今後も当面、枠は設けない。

 九大は昨年3月、数学科の後期日程定員9人のうち5人を女性枠とすると発表。「優秀な女性の人材を育成しないのは社会にとっても損失」「女性ならではの 視点と感性で教育、研究に多様性をもたらしたい」などの考えを示した。しかし、電話やメールなどで「男性差別につながる」「法の下の平等の観点から問題が あるのではないか」などの批判があったという。

 九大ホームページを通じて寄せられた意見22件のうち否定的なものは16件で、残り6件は「女性の研究者を増やしてほしい」など肯定的だったという。

 九大が弁護士ら法律の専門家に意見を聞くと、「女性枠」が法の下の平等に反する可能性を指摘された。女性枠で入る学生が受けるストレスも考え、19日の学内の協議で撤回を決めた。

 記者会見した入試担当の丸野俊一副学長は導入段階から学内でも賛否があったとし、「(研究分野で)男女共同参画を推進したいとの考えがあったが、法にふ れる可能性までは気が向かなかった」「社会の様々な決定の場に女性が出てくることが日本では極めて限られている。今後も女性研究者を増やしていく努力は続 けたい」と話した。

 文部科学省によると、全国の大学・大学院で女性教員が占める割合(2007年10月現在)は18.2%で、国立大は約12%。九大は全学で10.5% (今年5月現在)、数学分野では約4%(同)とさらに低い。名古屋工業大学など、推薦入試で女性枠を設けている大学はあるが、九大は一般入試以外でも女性 枠は当面検討しないという。

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