復興へ学生力を 各大学 支援態勢を拡充『朝日新聞』北海道版2011年04月28日付

『朝日新聞』北海道版2011年04月28日付

復興へ学生力を 各大学 支援態勢を拡充

 道内の大学では、東日本大震災の被災地でボランティアを行う学生に対して活動を単位として認めたり、旅費を負担したりするなどの動きが出ている。学生食堂を活用した募金活動をする大学もあり、支援の取り組みが着実に広がっている。

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■ボランティアに単位 物資提供など60時間

 被災地でのボランティア活動をした学生には単位を与える――。北海学園大(札幌市)の法学部はこんな取り組みを始める。

 岩手県釜石市でボランティア活動をしている札幌市のNPO法人「ねおす」の一員として、60時間働く。ねおすは、がれきの撤去や被災者への支援物資の提供、カフェの開設などの活動をしている。

 終了後に報告書をまとめ、ねおすからの評価書とともに学部側に提出すれば、2単位を得ることができる。交通費や食費などは自己負担だ。

 同大法学部にはこれまでにも、道内のNPOやNGOの計10団体で活動をした場合に単位を与える制度があった。10団体の中には道内に避難してきた被災者への支援活動をしているNPOもあるが、今回は被災地でのボランティア活動を希望する学生が多いと考え、ねおすを加えた。

 23日には学生への説明会を開催。約30人が集まった。3年生の秋元智絵さん(20)は「今まで募金や節電しかできなかったが、他に何かできないかと思った」と参加理由を語った。2年生の南拓磨さん(19)は「『何かしてあげたい』ではなく、『させてもらいたい』という気持ちです」と話していた。

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■9週間で70人現地へ 費用支給、授業は公欠

 酪農学園大(江別市)では、学生約70人と引率の教職員が9班に分かれ、今月29日から7月初めまで9週間にわたって岩手県大船渡市と宮城県石巻市でボランティア活動を行う。

 第1班の出発を2日後に控えた27日、事前オリエンテーションが行われ、学生や教職員約100人が先発調査隊から帰ってきた学生らの話を聴いた。

 大学では、現地で活動しているNGOに受け皿になってもらい、学生4人と教職員が1班になって約1週間活動する。

 大学の予算から活動支援費として学生1人に2万円を支給、交通費に充ててもらう。また大学側が費用負担して全員が保険に加入。授業は公欠扱いとなる。

 担当の高橋一教授は「震災1週間後に単独で被災地に入ったが、長期的なケアが必要だと感じた。学生の自主的な活動を、大学が後ろで支える態勢で臨みたい」と話す。

 第1班で29日から5月8日まで石巻で活動する獣医学科4年、渡辺洋子さん(22)は「特別な訓練を受けていない私たちがどこまでできるか不安もあるが、誠意を持って頑張りたい」と話す。

 北星学園大(札幌市)では、今月14~19日、学生17人と教職員2人が車に分乗して岩手県に入った。お好み焼き店「風月」(札幌市)と協力して16、17日、避難所でテントを設営し、お好み焼きや焼きそばを振る舞った。

 約3千食分の食材や調理器具は「風月」が用意し、学生が乗るレンタカーやガソリン代、フェリー運賃などは大学側が負担した。欠席した授業は出席扱いになるという。

 引率した鈴木克典教授は「札幌に帰ってきた学生の中には『今の生活のままでいいのだろうか』と問い直したり、就職活動を前に『普通の会社に入るよりもっと役に立つことができるのでは』と考えたりする学生もいました」と話した。

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■学食に「義援金献立」 量減らし差額を寄付

 学生食堂で食事すれば自動的に義援金が集まる仕組みを作ったのは、札幌大(札幌市)だ。

 仕組みは2通り。量を普段より1割ほど少なくしたメニューをこれまで通りの価格で販売し、「差額」を寄付する方法が一つ。もう一つは、材料費100円のメニューを400円で販売し、300円を寄付する。新学期が始まった今月7日に始め、24日までに3万7550円が集まった。

 同大の本田優子副学長が、阪神大震災で被災した知人から「復興には継続的な支援が必要」と聞いたことから考え出した。「何かしたいが、方法がわからないという学生は多い」とも話している。

 注文していた1年生の木村君由美(きよみ)さん(24)は「普通に食べて、募金できるのは負担を感じないのでいいと思った」と話していた。

(浦島千佳、芳垣文子)

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