『毎日新聞』山形版2011年4月28日付
山形大:経産省に補助金申請 有機EL照明の国際標準化、研究施設建設目指す /山形
◇米沢に
有機EL照明などの国際標準化を目指す山形大は、有機EL分野の応用研究施設の「有機エレクトロニクスイノベーションセンター」を米沢市内に建設するため、経済産業省のイノベーション拠点立地支援事業「先端技術実証・評価設備等事業」に補助金の申請を提出した。
山形大工学部が研究を進めている有機EL照明、太陽電池、トランジスタは、紙のように薄い膜で窓に張って太陽光発電をしたり、薄くて軽いディスプレーになるなど、さまざまな応用が期待できる。この薄い膜を将来、印刷方式で大量生産するための研究として、これまで工学部内で1センチ四方の試作品を作ってきたが、製品の性能や寿命を正確に評価するためには、30センチ四方か1メートル四方の大型膜が必要となり、膜を印刷形式で作る装置と収容する建物が必要になるという。
この事業は産学官の共同研究で、革新技術の実証研究や性能評価、製造に必要となる設備などに対し、必要費用の3分の2を国が補助する。山形大は3800平方メートルの平屋建て棟に印刷装置複数台を用意する約15億円のプランを構想した。
また、研究費や人件費については28日、文部科学省の「地域イノベーション戦略支援プログラム」などに補助金を申請する予定。
さらに、「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)の「次世代グリーン・イノベーション評価基盤技術開発」を受託することも決まった。国内の有機EL関連企業などで作る「次世代化学材料評価技術研究組合」、九州大学との共同開発になる。
有機ELの発光表示体の材料や周辺材料は材料や作り方が企業によって異なり、性能や寿命などを同じ基準で評価ができない。このため、標準的な評価方法の確立を目指している。この間、富士フイルム、住友化学、出光興産、大日本印刷などとも連携する。大場好弘工学部長は「有機EL照明の国際標準化はドイツのドレスデンなどとの競争だ。現在、技術的には日本が優位だが、標準化では欧州が優位にある。世界一になるためには、まず国内の評価基準の策定が急がれる」と話す。【和田明美】