産経関西配信記事 2011年3月29日付
【東日本大震災】関西の留学生、帰国の動き 情報不足…広がる誤解
東日本大震災による東京電力福島第1原子力発電所の事故をめぐり、関西に住む外国人留学生にも動揺が広がり、一時帰国したり、留学そのものを打ち切ったりする動きが相次いでいる。政府は海外メディアへの情報発信も強化しているが十分ではなく、言葉の壁から情報不足に陥っている留学生が「日本全域が危ない」と誤解して不安を募らせるケースすらある。
「放射能で日本全域危ない」
京都外国語大(京都市)では昨年秋から1年間の予定で学んでいた交換留学生31人のうち、中国や韓国、フランスなどの17人が一時帰国したり、途中で留学を打ち切ったりした。
「親が心配している」
「自国の政府から退避するよう指示が出ている」
留学生は口々に訴えたといい、4月から交換留学でやってくるはずだった13人も同じような理由で留学をキャンセルした。
京都外大では「京都は放射能拡散の心配はないことを留学生本人や母国の出身大学に説明したが、日本全体がひどい状況になっているというイメージを払拭できない」と困惑する。
同志社大(同)でも4月に交換留学生として来日予定だった24人が留学をキャンセル。昨年秋から来日していた留学生5人も留学を途中で打ち切って帰国した。
同志社大国際教育課も「これから日本にやって来る学生やその親に『京都は安全だ』と言ってみても理解されない」と戸惑う。
関西学院大(兵庫県西宮市)でも同様の動きが広がっている。
国際教育・協力センターによると、4月から同大学に留学することになっていた学生3人が親の説得を受けたりして来日を取りやめた。さらに4月から欧米などの協力大学から受け入れる予定だった交換留学生48人のうち11人が相次いでキャンセル。ほぼ全員が放射能漏れを心配していたという。
関東の大学に在籍する留学生には、より遠くの関西の大学に留学先を変えたいと希望するケースも出てきており、関学では特別措置として一定の条件を満たせばこうした留学生を受け入れることを決めた。来月5日までに6人が転入する予定という。
同センターは「日本の情報は本当に正しいのか、疑心暗鬼になっている留学生もいるようだ」と話している。
事故をめぐっては、情報発信が十分でないため日本の対応を「不透明」などと報道する米英のメディアもあり、在京大使館の一時閉館や機能移転などが相次いだ。原発事故をセンセーショナルに取り上げるケースも増えているという。
1500人以上の外国人留学生がいる京都大でも帰国の動きが出ているが、教員の一人は留学生に動揺が広がる理由について「日本では英語ニュースの露出が少なく、留学生に情報がちゃんと入らない。そうなると母国のメディアのニュースサイトをみて情報収集するが、海外の報道の情報は断片的になりがちだ」と指摘した。