大学学費の物価超え 『四国新聞』2011年3月8日付

『四国新聞』2011年3月8日付

大学学費の物価超え 

 大学入試の苦難をくぐり抜ければ、次の苦難が待ち受けている。全国大学生協連の調査によると、親元から離れて下宿する大学生の住居費を除いた生活費は平均で月6万3130円と、30年前の水準まで下がった。この間の物価上昇を考えると、生活はより厳しくなったといえる。

 親の暮らしの厳しさを示す数字でもある。年収500万円未満の大学生の親は3割以上となり、仕送り額は4年連続で減少。学生はアルバイトで稼がざるを得ないが、長期化する就職活動などが理由でアルバイト収入も減っている。

 さまざまな意味で「苦学生」が増える一方、過去30年間に大学の学費は大幅に上昇。「私立大と比べて安すぎる」といわれていた国立大で、授業料、入学金を合わせ3倍以上に跳ね上がった。私立大も施設整備コスト増などを理由に値上げしていった。国立、私立とも互いの値上げに便乗したとの批判もある。

 かつて、学費値上げはしばしば学園紛争の引き金となった。紛争を回避しようとした大学は、やがて物価上昇率に合わせて学費を自動的に上げる「物価スライド制」を導入した。70年代から80年代にかけてのことだ。しかし、結果的に物価上昇率をはるかに超えて学費は上がってきた。

 生活の豊かさは1人当たりの国民所得だけでは測れない。望む人が必要な教育を受けられる機会の均等は、豊かさの「絶対条件」の一つだろう。それが揺らぎつつある日本は「豊かさ途上国」へと後ずさりしているようにも思える。(K)

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