曝書(2月22日)『北海道新聞』卓上四季2011年2月22日付

『北海道新聞』卓上四季2011年2月22日付

曝書(2月22日)

<虫くひの系図の本も干されけり>(子規)。かつては蔵書のカビや虫食い防止のため、夏に和装本や漢籍を天日に曝(さら)した。「曝書(ばくしょ)」といい、夏の風物詩だった▼図書館では、いまも蔵書の一斉点検を季節を問わず「曝書」と言い習わす。ところが、この国には別の意味で「曝書」をする図書館があった▼誰が、どんな資料を調べたかをあばき、仲間に曝す「曝書」。それがよりによって「図書館の中の図書館」ともいうべき国立国会図書館2 件で行われていた。開いた口がふさがらない▼1997年当時、国会図書館に出向していた外務官僚が、国会議員や大学教授が同図書館で調べている内容を本省に報告。外務省2 件はそれを省内で回覧していた。公開された外交文書で明らかになった▼48年制定の国立国会図書館法は「真理がわれらを自由にするという確信に立って、憲法の誓約する日本の民主化と世界平和とに寄与する」ことを、その目的に掲げている。この高い理念と、こそこそと注進する行為が相いれないのはいうまでもない。議員の調査は時の政府に都合の悪いこともあろう。国会追及前の情報漏れは民主主義を危うくすることにもつながる▼漏えいは国家公務員法の守秘義務違反の疑いもあるという。外務省と国会図書館になれ合いのカビがはびこり、情報を筒抜けにする虫食い穴があいていないか。徹底した虫干し調査を求めたい。

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