東大、入試改革目指す 浜田総長「多様な学生求める」『朝日新聞』2011年2月21日付

『朝日新聞』2011年2月21日付

東大、入試改革目指す 浜田総長「多様な学生求める」

 国立大学協会会長の浜田純一東大総長がインタビューに応じ、東大として入試改革や教育の質向上の必要性を訴えた。また、国大協会長の立場では、国立大学の改革の土台となる案を国大協でまとめる方針で、それを参考に大学独自に機能強化することが重要と述べた。(編集委員・山上浩二郎)

――任期3年目に入るが、東大総長として重視する点は。

 任期中に思い切ったことをするには、3、4年目が重要になる。東大全体としては、教育のさらなる質の向上に重点を置きたい。教養教育の強化もその一つ。教養学部では文系理系計6学科を3学科に今年4月から再編する。学部の性格に応じて、専門課程の教育と大学院課程での教育のより密な接続も検討する。

――入試改革の必要性は。

 基本は変えるつもりはないが、一部では別な選抜のあり方も探りたい。ペーパーテストだけでは見つけられない学生をどう受け入れるかなど、学生の多様性をさらに高めたいという問題意識がある。AO入試を意味するものではない。希望としては任期中に実現したいのだが。

――学生の海外への留学を東大の制度として拡充する考えは?

 本来なら全員、1年海外に行かせるくらいのことをしたい。しかし、家庭の経済状態や就職活動を考えると、学生はなかなか留学に踏み切れない。むしろ、企業、社会が変わらないと。学生が元気になるような雇用状況にしてほしい。

 東大としては、留学する場合、優秀な学生には授業料を減免することができないか検討している。留学とは異なるが、社会の動きと連動して社会人の再チャレンジ支援の仕組みをつくるため、優秀な社会人の授業料を減免することも検討したい。

――本格的に女子学生を増やす努力を始めているが、なぜ。

 学部学生の女性比率は2割程度で横ばい。地方での入試説明会には現役の女子学生にも参加してもらい、母校訪問などで発掘しようとしている。東大を出てどんなキャリアを描くことができるのか、企業で働いたり家庭を支えたりする女性卒業生の姿を見せたい。人口が減っているから、このままの比率では、学生全体の力が落ちていく。多様性にもつながるし、ものの見方、目線の違いもあるはずだ。比率が男女8対2のままでは、教育や研究にも変化が起きにくいのではないか。

――国大協会長としてうかがいたい。来年度予算案の増額の条件として、機能別分化、組織見直しを含めた大学改革を進める方策を1年以内をめどに打ち出すことが上がった。対応は。

 各大学が自主的な改革を進めるのは当然だ。財政状況は非常に厳しいが、どうすれば日本の明日を支える大学の役割を果たしていけるか、道筋を考えたい。昨年12月に国大協として、国立大学の機能強化の検討に取り組むと宣言して、検討委員会の作業が始まっている。単独でがんばる、あるいは連携や再編を行うなどは結果論で、重要なのはそれぞれの国立大学が特徴を出して機能強化することだ。

 国大協の役割は、全体的なフレームを用意すること。6月には中間報告を出して、改革の土台となる案をまとめるので、各大学がそれを参考に独自の改革を進めてほしい。たとえば東大は今後の計画をまとめた「行動シナリオ」を実行していく。地方の大学は各地域でコミュニケーションを活発にしながら足場を固めて、必要に応じて他大学との連携も模索する。

Proudly powered by WordPress   Premium Style Theme by www.gopiplus.com