『信濃毎日新聞』2011年2月21日付
学生生活調査 実り多い経験を第一に
アパートなどで暮らす大学生の生活費が30年前の水準まで落ち込んでいる-。全国大学生活協同組合連合会が、そんな調査結果をまとめた。
2010年の住居費を除く生活費は月6万3千円余り。驚くほど低い額ではないが、この間の物価上昇を考えれば、余裕がなくなってきたことが分かる。長引く景気低迷の影響が濃く表れている。親からの仕送りは4年続けて減り、ゼロの人も1割を占める。
それでも仕送りの平均は月7万円に上る。親の負担はなお大きい。足りなければ、アルバイトや生活を工夫して補えばいい。
ただ、やりくりに追われ、学生本来の経験の幅が狭まるようでは本末転倒だ。大学が中心になり、学生の生活を支える環境づくりを進めたい。
調査によると、学生の収入の22%を奨学金が占める。過去最高の割合という。ほとんどに返済義務があり、利子付きもある。
卒業後も就職できなかったり、所得が低かったりで返済が滞る人が増えている。返せないことへの不安から、利用を控える学生もいるという。
欧米の大学には、返済しなくていい「給付型」の奨学金が多い。数十人、数百人の卒業生から寄付を募り一つの奨学金にまとめている例もある。日本でも、給付型を増やす必要がある。
就職先がなかなか決まらないことも痛手になっている。
4年生のアルバイト収入は、09年に比べ6%近く減った。就職活動に追われ、働く時間が少なくなっているからだ。外食が多くなり食費も増えている。交通費もばかにならない額だ。
日本経済団体連合会は長期化する就職活動の是正策を決めた。会社説明会の時期をいまより2カ月遅らせ、3年生の12月からにするといった内容だ。さらに改善を重ねるよう求める。各企業が足並みをそろえることが欠かせない。
入社試験の開催場所を分散化させるなど、学生の負担軽減にも努めるべきだ。
学生も、お金をかけずに見聞を広める方法を探ってほしい。
例えば留学するなら、海外にも外国人向けの奨学金制度を設けている財団がある。国内外のNGOが主催するスタディーツアーは、安価で発展途上国の問題を深く学ぶ機会になる。
お金は無くても、それなりに楽しいのが学生時代だ。厳しい社会状況にめげず、実りの多い時を過ごしてもらいたい。