MSN産経ニュース配信記事2011年2月21日付
関経連 理工系の「絶滅危惧学科」の活性化に着手
関西経済連合会は、ものづくりの基盤技術を担う一方、理工系学部で学生離れの著しい冶金(やきん)や鍛造(たんぞう)、土木などの不人気学科を「絶滅危惧学科」と位置づけ、大学などと連携して活性化に乗り出した。すでに会員企業を対象とした実態調査を行っており、企業の需要などを分析し、5月をメドに具体策をとりまとめる。
鉱石から金属を取り出して精製する冶金や、金属素材を加熱・成形する鍛造などは、新素材の開発・加工に寄与する技術。文部科学省によると近年は冶金や鍛造といった学科は「マテリアル学科」に名称を変更するケースも多い。
明確な志願者数などは分からないものの、全国で大学の工学関連学部の志願者数はピークだった平成4年の約89万人から20年には53万人に減少しているという。同省では「『絶滅危惧学科』とみなされる分野への志願者減少もあるはずだ」とみている。
関経連に加盟する関西学院大学も22年度の理工学部入試で、金属などを対象とする物理学科の競争率は2・4倍。最先端技術のロボット分野などを学ぶ人間システム工学科の競争率4・3倍を下回り、「材料関連の基礎分野は人気が低い」(同大広報)という。
関経連は昨年11月に発表した提言で、環境・エネルギーなどの先端技術分野に人材・予算が集中し、冶金や鍛造、土木などものづくりの基盤となる技術分野で人材育成がおろそかになっていると指摘。基盤技術分野を「絶滅危惧学科」と位置づけ、技術継承につながる仕組みづくりを進めることにした。
関経連で産業発展に関する施策を担当する産業委員会が昨年末、製造業など約100社を対象に冶金や鍛造などの人材確保に対する企業の採用意欲を問うアンケートを実施。結果を基に大学からも意見を聞き、今年5月にも具体的な対応策を策定する。
業界や団体が共同で大学に寄付講座を設けたり、企業の研修施設を活用した新しいカリキュラムを大学に導入したりする案があるという。関経連で同委員会を担当する森下俊三副会長(NTT西日本相談役)は「絶滅危惧学科は大学だけではなく産業界の問題でもある。産学で解決に向けて動き出す必要がある」と話している。