『読売新聞』社説2011年2月20日付
教員養成改革 「修士制」は切り札になるか
優れた教員を育てるにはどうすればいいか。
「教員免許制度」の見直しなどを検討している中央教育審議会の特別部会が、約半年間にわたる審議の経過報告をまとめた。
これまで、大学4年間で必要な課程を履修すれば取得できた教員免許について、さらに大学院で1~2年程度、修士レベルの教育を受けることを義務づける内容が盛り込まれている。
養成に時間をかけ、学力低下やいじめなどの問題に対処できる実践的な指導力を身につけさせるのも、一つの方法ではあろう。
報告書によると、学部4年の卒業生には仮免許にあたる「基礎免許状」を与え、教員として採用された後、一定期間内に大学院に通って必要な課程を修了した人には、本免許に相当する「一般免許状」を与えるという。
しかし、これらを教員の資質向上に結びつけるには、大学や大学院のカリキュラム改善が必要だろう。従来の教育内容で欠けていた点を厳しく自己検証しなければならない。指導役となる大学講師陣の質も問われることになる。
小学校で理科の実験を苦手にする先生が多い、高校で地理の基本知識に欠ける先生がいる、などの指摘が各方面から出ている。教科の専門知識を深め、指導法を習熟させる教育が求められる。
大学院の学費負担の問題も解決しなければならない。報告書は奨学金の活用に言及したが、国が財源を確保できなければ、負担を嫌って教員志願者が減り、優秀な人材が集まらない恐れがある。
今後10年間は、定年を迎える教員の大量退職が続き、教員全体の約3分の1が入れ替わると予想される。意欲と能力のある若手教員を養成する必要がある。
一方、社会に出て経験を積んでから教員を目指す人に門戸を開くことも大切だ。報告書が「社会人が大学院に通うことで教員免許を取得できることも検討する」としている点は注目されよう。
教員の資質向上には、採用後も教員一人ひとりが、絶えず研さんを重ねていくことが欠かせない。
一昨年に導入された「教員免許更新制」は、現職教員に対し、10年ごとに大学などで講習を受けることを義務づけている。
報告書は、「専門免許状」という新免許を創設し、学校経営や生徒指導など各分野で秀でた教員に与える構想を提示している。
生涯を通じ、教員のレベルアップを図る仕組みについて、さらに議論を深めてもらいたい。