【西頭 徳三さん】国立大の改革 法人化の意義理解を『朝日新聞』富山版2011年2月7日付

『朝日新聞』富山版2011年2月7日付

【西頭 徳三さん】

国立大の改革 法人化の意義理解を

私は40年間の大学勤務のうち、幸い最後の8年間を故郷で過ごすことができた。この間に、わが国の三大教育改革のひとつ、「国立大学の法人化」の具体化作業に関わった。また、全国で初めてと言われる、県内の三つの国立大学の再編・統合に直接参画する機会を得た。

国立大学の法人化は、それまでの二つの教育改革である、明治5(1872)年の「学制発布」と昭和24(1949)年の「新制国立大学の発足」と比べて大きく異なる。明治の教育改革では富国強兵策を推進するため、欧州の大学制度を導入した。戦後の教育改革でも、廃虚からの経済復興を目指して、アメリカ・モデルが直輸入された。

いずれの教育改革も、国の目標が明確で国民に分かりやすく、しかも改革の手本が海外にあった。改革のための環境条件が整っていた。

ところが、平成の教育改革は、状況が全く異なる。国立大学の法人化の議論は1997年の「行政改革会議(最終報告)」に始まる。その後の検討で目指された方向を、私なりに要約すると次の4点になる。(1)国立大学の国際競争力を高め、地域の発展に貢献できるようにする(2)競争原理を導入し、第三者評価に基づき資源(予算)配分をする(3)社会(納税者)への説明責任を果たす(4)経営責任を明確にし、戦略的な大学運営をする――。

法人化は第1期6年(2004~2009年)を終えたばかりだ。改革の成果を云々(うん・ぬん)する段階ではないが、地方国立大学の立場から「気づき」を二点のみ述べる。

第一に、失われた20年と言われ、長期不況からの脱出口が見いだせず、海外に適切な手本もない中で、法人化の制度設計が行われたことを評価したい。

第二に、法人化の重要な目的のひとつに、地方国立大学と地域との関わり方の是正があったと思う。少子高齢化で地域社会が崩壊しつつあるからだ。法人化のメリットを最大限に生かして、地域を直視し、特に人材育成面で研究成果を還元すべきだと思う。将来、「教育の軽視」は地方大学の存亡につながるだろう。その意味で、法人化の意義や内容が大学関係者をはじめ一般に十分理解されていないとも思う。

個々の大学が21世紀で世界に伍(ご)してしていけるかどうかは、真の意識改革、現状の直視、そして大学構成員のエネルギーの注入のあり方に懸かっている。

最後に、7年間にわたりお付き合い下さった読者の皆様に、厚くお礼を申し上げたい。

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