内部告発で発覚 学長「非常に責任感じる」 富大補助金不正受給 『読売新聞』2011年2月5日付

『読売新聞』2011年2月5日付

内部告発で発覚 学長「非常に責任感じる」 富大補助金不正受給

 調査結果について説明する西頭学長(4日、富山市の富山大学で)  研究費を名目に国の補助金がずさんに使われていた――。糖尿病患者の医療データのソフトが未完成のまま、データベースを構築するなどしたとして、同大大学院医学薬学研究部の小林正・特別研究教授が厚生労働省から補助金約4700万円を受け取っていた不正経理問題。小林氏は糖尿病研究の権威で、当時、富山大副学長兼付属病院長だったが、4日付で諭旨解雇となった。西頭徳三・同大学長は「なぜ(こんなことをしたの)か、よく分からない」と頭を抱えた。

 同日に記者会見した西頭学長と平井美朗副学長(研究担当理事)らによると、小林氏は2006年度、いずれも東京にあるソフト開発会社と医療データ解析会社に研究に必要なデータベース用ソフトを発注したが、未完成なのに完成したものとして、同省の厚生労働科学研究費補助金から約900万円の支払いを受けた。

 また、07、08年度には、このソフトができていないのに、医療データ解析会社とデータベース運用などで約3000万円の随意契約を結んだ。

 さらに、この研究に協力してもらうために全国の医師に配るガイド本3000冊を、実際には完成していないのに、ダミーの見本を経理担当者に示して完成したように信じ込ませ、同補助金から800万円をガイド本制作を委託していた医療データ解析会社に支払った。

 小林氏は、2000年度に富山医科薬科大(現富山大)副学長兼付属病院長に就き、09年3月末まで務めた。問題が発覚したのは、この2か月後で、大学関係者から同省への内部告発だった。

 大学側によると、小林氏は、「まずいことをした」などとしながらも、「ソフトには詳しくないので、(完成したかどうか)確認できなかった。業者には(不正を)指示していない」と説明した。ただ、業者側は「指示を受けた」としているという。

 西頭学長は「ケアレスミスの段階ではない。見過ごすことはできない」とし、「(小林氏は)監督する立場にあり、一般の教員とは違う。私自身も非常に責任を感じる」と自身の責任についても検討することを示唆した。

 国立大学を巡っては昨年、山口大医学部と工学部(いずれも山口県宇部市)で、大学と取引がある業者に物品を架空発注するなどし、国などから交付された研究費を業者に預ける不正経理を繰り返していたとして、教職員26人が解雇や停職などの懲戒処分となったほか、山口地検が詐欺容疑で学内を捜索した。また、帯広畜産大(北海道)や大阪大大学院でも不正経理が発覚した。

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