“医師の卵”確保 大分大と県、試行錯誤『大分合同新聞』2011年1月28日付

『大分合同新聞』2011年1月28日付

“医師の卵”確保 大分大と県、試行錯誤

 県知事のトップセールス、教育環境の充実、手当の増額―。2004年度の新臨床研修制度の導入以降、地方圏の医師不足に拍車が掛かっており、大分大学医学部は「医師をめぐる地域間競争の時代だ」と言い切る。同大学と県は“あの手この手”を繰り出しながら、将来の地域医療を担う人材確保に懸命だ。

 「大分はプロスポーツが盛んで、美しい自然にも恵まれている。行政としてもさまざまな形で医師の育成を応援している。ぜひ県内に定着してほしい」

 今月14日、由布市挾間町の大分大医学部講堂。約250人の医学生を前に、広瀬勝貞知事は熱弁を振るって大分を強力にPR。医師の卵に向けたトップセールスは1時間以上に及んだ。

 新臨床研修制度に伴って学生が研修先を自由に選べるようになり、都市部や症例が豊富な民間病院に希望が集中。研修後もそのまま都市部などにとどまるケースが多い。大分大医学部付属病院卒後臨床研修センターは「大学間と地域間、そして大学病院と民間病院の間で争奪戦が激しさを増している」とする。

 大分大は昨年4月、内視鏡手術や救急救命シミュレーションを体験できる機器を備えた専門施設を新設、医療スキルの腕を磨く教育環境を内外にアピールする。福利厚生でも、新年度から研修医に最大2・7万円の住居手当を給付する方針という。

 この他に、民放アナウンサーが学生に方言を紹介する「大分弁講座」や、大分をPRする県職員による出前授業も。試行錯誤を繰り返し、研修医確保の妙案を模索する。

 同大学によると、医学部生の3分の2は県外出身。「卒業後も大分に残り、地域医療に携わる人材を確保するには、医療技術の習得や福利厚生の環境整備だけでなく、大分に親しみを感じてもらうことが大事」とセンター担当者は話した。

<ポイント>県内の医療事情

 厚生労働省が2010年初めて実施した「必要医師数実態調査」によると、県内の医療機関が必要と考えている「必要医師数」は、現在の医師数の1・26倍で、全国で5番目に高い。県医療政策課によると、無医地区は40カ所(09年10月末現在)で全国ワースト4位。医師の半数が大分、別府両市に集中し、県内でも「医療格差」は拡大傾向にある。

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