人気は「地元・公立・理系」 不況…大学選び堅実志向『朝日新聞』2011年1月17日付

『朝日新聞』2011年1月17日付

人気は「地元・公立・理系」 不況…大学選び堅実志向

 大学入試センター試験が実施され、本格的な入試シーズンに入った。今年の受験生の志望動向は、安定志向と地元志向。「内向き」と言われる高校生の気質に、歴史的な就職難や不況が加わり、理系学部や、資格がとれる学部が多い地元の大学の人気が高くなっている。(増谷文生)

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 傾向が顕著に表れているのが、これまで目立たなかった地方公立大の人気だ。医療、看護、栄養といった仕事に結びつきやすい資格が取れる学部が多いためだ。また、難易度も同じ地域にある国立大よりランクが落ちるのが一般的。受験科目も、5教科7科目を課すのが大半の国立大に比べ、2、3教科のみというケースが多い。

 第一志望は地元の国立大。センター試験で失敗すれば、浪人せずに地元の公立大へ。こうした受験生が増えていることについて、代々木ゼミナールの坂口幸世・入試情報センター統括本部長は「高い家賃を払って首都圏や関西の大学に通っても、大企業をねらった就職活動の見通しは厳しい。それならば、地元の大学でいいと考える子が増えている」と分析する。

 学部・学科別の人気を、代ゼミや河合塾の模擬試験の結果から見ると、就職に有利かどうかで判断されていることがわかる。目立つのは、理系学部の人気ぶり。逆に文系は「不況に強い」と言われる経済系の学部も、今年は志望者が伸びていない。

 河合塾の模試では、理系の中でも理、工、農、医の各系統の志望者が前年よりも国公立で5~9%、私立で12~17%も増加。いずれも女子の増加が目立つ点が共通している。同社の分析では、就職に有利なイメージがあることに加えて、最近日本人科学者のノーベル賞受賞が相次ぎ、受験生が基礎研究分野に目を向けるようになったとみる。

 不人気な文系の中で目立つのは教員養成課程。国公立大(前期)では、前年より10%も志望者が多い。地方大学の中には、前年より20%から40%も多いケースもあった。

 高校の先生もこうした受験生の傾向を実感している。河合塾が昨年11月~12月に約2200人を対象に実施したアンケートでは、受験生が就職を意識した学部系統選びをする傾向が「強まっている」「やや強まっている」との回答が計71%にのぼった。

 さらに、家庭の事情で大学への進学を見直す生徒が「増えている」「やや増えている」が計34%、私立大の受験校数を減らす傾向が「強まっている」「やや強まっている」も計52%。同社教育情報部の富沢弘和チーフは「厳しい経済環境が、受験生の進路選択に影響を与えていることが改めて浮き彫りになった。進学先を選ぶ際にも、学びたいことや適性以上に就職を意識しすぎる傾向が強まっており、先生たちは対応に苦慮している」と話した。

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 遠くの大学を志望する場合、受験のために本格的な旅行をする人も多いだろう。いくら一生懸命に受験勉強をしても、試験本番で力を発揮できなくては努力も水の泡。「サクラサク」春を迎えるために、受験旅行のポイントを紹介する。

 「受験会場の下見は必ずおこなってほしい」

 旺文社の受験情報誌「蛍雪時代」の宮澤静也総編集長は、受験の直前に、試験当日と同じ時間帯に会場まで移動してみることを勧める。

 移動には、渋滞などで所要時間が予想しにくいバスよりも、電車を使うのが基本だ。バスしか交通機関がない場合、混雑でバスに乗りきれない事態も考え、いざというときにはタクシーを利用できるよう、持って行くお金には余裕を持たせたい。

 電車で向かう場合でも思わぬ落とし穴がある。大きな駅で迷ってしまったり、電車が混雑し予定の駅で降りられなかったりする危険もある。広大で多くの建物があるキャンパスで迷う可能性も考えて、宿から会場の建物まで行ってみるのがポイントだという。宮澤総編集長は「雪や事故などで交通機関のダイヤが乱れた場合、大学は試験開始を遅らせるなどの対策を必ずとる。万一トラブルに巻き込まれた場合でも、大学に電話をかけて事情を説明したうえで、あきらめずに会場へ向かってほしい」とする。

 持ち物や服装についても、いくつかポイントがある。

 宿では、気持ちが高ぶってほとんど勉強が手に付かないもの。移動の負担も考えて、参考書などの勉強道具は最低限に絞るべきだとする。服装は、薄手の服を重ね着するのがオススメだ。暖房が利きすぎた会場も多いため、必要に応じて脱ぎ着できた方が便利だという。

 試験会場で注意したいのは、携帯電話の扱いだ。特に、ふだん携帯電話を時計代わりに使う人は要注意だ。試験中はバッグにしまうよう指示されるので、別の時計を準備しないと解答時間の配分ができなくなる恐れがある。また、試験中に着信音やアラーム音などが鳴ると、焦って集中力が途切れるうえ、失格とされる恐れもある。試験直前には、まちがいなく電源を切ってあるか確認が必要だ。

 リラックスして試験にのぞむために宮澤総編集長が勧めるのが、大学生協の活用だ。全国の200程度の大学にあり、受験生向けにさまざまなサービスをおこなっている。

 例えば埼玉大生協は、受験生に旅行会社を紹介するほか、学生委員会の学生が2、3人ずつ、同大近くの五つのホテルに詰める。受験や大学にかんする相談に乗るためで、10年以上前に始まったという。昨年は、夕食を食べる店や過去問の解き方、試験前夜の過ごし方などをテーマに40人の相談に乗ったという。

 他の大学でも同様のサービスをおこなっており、全国大学生活協同組合連合会のHP(http://www.univcoop.or.jp/coop/list.html)で、各生協のサービスを見ることができる。

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