霞が関ウオッチャー:精いっぱいの「鈴寛節」『毎日新聞』2011年1月5日付

『毎日新聞』2011年1月5日付

霞が関ウオッチャー:精いっぱいの「鈴寛節」

 来年度予算案が決定した昨年12月24日夜、記者会見した鈴木寛(かん)、笹木竜三両副文部科学相は対照的な表情を浮かべていた。

 鈴木副文科相が担当する文教関連予算は、前年度比778億円減の4兆1641億円。笹木副文科相の科学技術関連予算は、同339億円増の1兆683億円と、明暗を分けた。

 政権交代後の一昨年9月に就任し、政策決定に議論を尽くす「熟議」が流儀で、2年連続予算編成にかかわった鈴木副文科相。マニフェストに掲げ、来年度に小学1、2年生への導入を目指した「35人学級」は1年生のみとなった。「低所得世帯に学びの場を」と打ち出した高校生に対する給付型奨学金も、2年連続で見送られた。質疑では、普段の立て板に水の「鈴寛節」は影をひそめた。

 笹木副文科相は昨年9月に就任。政治主導で予算編成できるか懐疑的な声もあったが、菅直人首相の「(科技予算については)わがままを言わせてもらう」の鶴の一声で、急きょ約400億円が新たに振り分けられた。文科省予算を担当した財務省の神田真人主計官ですら「スーパー政治的な指導でやり直した」と苦笑する展開だった。

 編成まっただ中の昨年11月11日。鈴木副文科相は会見で声を詰まらせながら、父親の失業で授業料が払えなくなった高校生の声を紹介し、普段の冷静さからは想像できない態度で支援の必要性を説いた。苦学生にクリスマスプレゼントを届けることはできなかったが、会見の最後では再び「低所得世帯に学びの場を」の持論を展開。「国民を交えた熟議で、奨学金の新しい実施方法を考えたい」と精いっぱいの「鈴寛節」をのぞかせ会見場を去った。【篠原成行】

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