脱ゆとり教育本格化 教員数増など環境整備が急務『愛媛新聞』社説2011年01月04日付

『愛媛新聞』社説2011年01月04日付

脱ゆとり教育本格化 教員数増など環境整備が急務

 「ゆとり」教育路線からの転換を図った新学習指導要領の本格実施が4月から始まる。約30年ぶりに授業時間数が増え、小学校では外国語(英語)活動が週1時間必修となる。

 世論調査などでは、新学習指導要領を評価する声が圧倒的だ。それだけ「子供たちの学力低下」に対する不安感が大きいのだろう。

 果たして「ゆとり」は「学力低下」の原因なのか、学力は本当に低下しているのか。総括のないままの方向転換や「総合的な学習の時間」の時間数削減には疑問があるが、移行措置として一部教科を先行実施するなど「脱ゆとり」教育は走り出している。

 文部科学省によれば、現行要領が打ち出した「生きる力」の育成は継承する。そのための手だてが、知識を「活用」する力や言語力の習得などだ。週1~2時間の時間増の範囲でこれまで以上に教員の指導力が求められることになる。

 急がねばならないのは、負担の増す教育現場の環境整備であろう。

 教員の多忙化や長時間の過密労働が指摘されて久しい。2009年度調査で最多となった精神性疾患で休職する教員の増加も、業務の忙しさと無関係ではない。

 文科省は、8年間で教員定数を増やし、公立校1学級の児童生徒数上限(40人)を引き下げる方針で、来年度予算概算要求に小1、2年の35人学級化に向けた必要経費を盛り込んだ。が、財務省の反対で小2の実施は見送られている。

 教育費の公的支出は先進国中最低レベルであり、民主党は少人数学級を政権公約に掲げていたはず。教員が児童生徒と向き合ったり授業研究に費やす時間を確保するため、定数増や少人数学級化を着実に進めてもらいたい。

 現場に余裕がなければ「詰め込み」教育化する懸念がある。子供の学ぶ意欲を奪うことだけは避けたい。

 国内の学力低下批判を強めたのは経済協力開発機構の国際学習到達度調査(PISA)だった。ただ、09年はゆとり世代が対象でありながらも結果は改善傾向。PISAについては順位に一喜一憂するのでなく、改善理由を分析するとともに、得点下位層の割合の高さや記述問題の無回答の多さなど、子供たちの学びの「質」に注目して対策を講じるべきだろう。

 現在の就職難を例に挙げるまでもなく子供たちを待ち受ける社会は予測不可能だ。変化への対応に必要なのは「自ら学び、考え、判断する力」である。新要領の下でも、生涯にわたり新たな知識を吸収し社会に柔軟に対応できるよう、主体的に学ぶ力と意欲をこそ身につけさせたい。

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