場当たり政策…底ついた埋蔵金 SankeiBiz配信記事 2010年12月31日付

SankeiBiz配信記事 2010年12月31日付

場当たり政策…底ついた埋蔵金          

 ■2011年度予算編成 

 「最後は私が決める」。2011年度予算編成の最中、菅直人首相が幾度も口にした言葉だ。だが、取材を通して見えてきたのは、決まりかけた案件をいたずらにひっくり返し、肝心の財源探しを官僚に“丸投げ”する姿だった。その後には借金漬けの予算案と将来への不安だけが傷跡のように残った。

 菅政権の場当たり的な政策運営が如実に表れていたのが法人税減税をめぐる騒動だった。「5%引き下げる方向で調整を指示した」。13日夜、菅首相は記者団に一方的に宣言すると、財源のあてを尋ねる声には答えずに歩み去った。財源確保が可能な3%引き下げを主張する財務省案を退けての決断だったが、この時点で財源のあてがあったとは思えない。

 翌日の会見で、仙谷由人官房長官が「(財源は)財務省が掘り出してくる」と述べたのがその理由だ。日頃は“官僚主導”の権化のように財務省をたたき続けているにもかかわらず「政治主導」の尻拭いはその官僚に押しつける-。そんな民主党政権の体質が透けて見えた瞬間だった。

 科学技術振興費の上積みをめぐっても迷走を続けた。菅首相は編成作業の最終盤になって「わがままを言わせてもらいたい」と突如、増額を指示した。いまさら他の予算を削るわけにもいかず、本来なら緊急事態のために取っておく予備費を削って決着。前代未聞の予備費先食いについて、財務省幹部は「極めて高度な政治判断」と皮肉った。

 こうしたビジョンなき対応の末に行き着いたのが、特別会計の「埋蔵金」を食いつぶし、瀕死(ひんし)の財政をさらに痛めつける予算案だ。少子高齢化で社会保障関係費が過去最高の28兆円超に達し、今後も増え続ける。

 その処方箋となる消費増税議論は年明けから本格化する見通しだが、支持率低下や民主党内紛、ねじれ国会で政権の先行きには暗雲が漂う。財務省内からは「支持率も落ちるところまで落ちたのなら、歴史に名を残すべく消費増税を決断すべきだ」との声も上がる。「最後に私が決める」という菅首相の“最後”の決断に注目したい。(橋本亮、田辺裕晶)

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