『沖縄タイムス』2010年12月30日付
「進学断念の生徒増」78% 経済事情 県内深刻
奨学金申請にも影 高教組・教員アンケート
「入学金が準備できず進学を断念」、「奨学金を利用したくてもできない」―。高校生の学習や生活実態を把握しようと、高教組(玉那覇哲委員長)が県内の高校教員に行ったアンケートで、経済的事情で進学をあきらめる生徒が増えたと感じる教員が全体の78%に上るなど、高校生を取り巻く就学環境の厳しさが29日、明らかになった。また、保証人となる親や親戚の雇用状況が、就学を支える奨学金の申請にも影を落としていることが分かった。(渡慶次佐和)
高教組は9月から11月にかけ、私立高と特別支援学校を除く、60校のクラス担任を中心にアンケート用紙を配布。進学だけでなく昼食代や交通費、医療費など生活全般に関しても質問。38校40課程の437人の教員から回答を得た。
北城博子高教組副委員長は「地区別では北部や離島、校種別では普通校より工業・商業などの専門校や定通制で厳しい実態が分かった」と全体的な傾向を説明。
アンケートでは「経済的理由で大学や専門学校への進学を断念する生徒が増えたと感じるか」の質問に対し、「とても感じる」「やや感じる」を合わせた数値が全体の78%となり、地区別では北部で82%、離島で84%だったが、南部、那覇、中部いずれも75%以上だった。
一方、離島地区の普通高校で進路を担当する教諭は「申請した奨学金の利用が(経済的事情で)認められず、進学をあきらめ、年明けから就職活動を始める生徒がいる」と話す。
「各種奨学金を利用したくてもできない生徒はいますか」の項目に、「いる」と回答とした教員の割合は普通校36%、専門校40%、定通制30%。
「利用できない理由」として、普通校では「保証人が探せない」「必要書類がそろえられない」という理由が多く、専門校・定通制では「成績が足りない」が半数以上を占めた。北城副委員長は「(保証人となる)親戚も経済的に苦しかったり、親が非正規雇用である場合は仕事を休めず必要書類を用意する時間がない。大人の問題が子どもに影響している」と背景を指摘する。
また、今年4月から授業料の実質無償化が始まったが、「PTA会費や教材費など校納金が払えない家庭の生徒はいますか」には、全体の61%が「いる」と回答。
中部地区のある学校職員は「電話がとめられ連絡がとれなかったり、分割納入が難しい家庭も少なくない。給付型の奨学金制度の充実や、小・中学の就学援助のような支援が高校でも必要だ」と訴えた。