科学技術政策 研究投資を経済成長に生かせ『読売新聞』社説12月31日付

『読売新聞』社説12月31日付

科学技術政策 研究投資を経済成長に生かせ

 日本の科学技術力を今後も維持して行くための土台としたい。

 内閣府の総合科学技術会議が、来年度から5年間の「科学技術に関する基本政策」をまとめた。政府の第4期科学技術基本計画として、来春、閣議決定される。

 経済成長を支える科学技術分野の主柱として、エネルギー・環境技術と健康・生命科学の二つを掲げ、研究から産業化まで支援して行く方針を打ち出した。

 基礎分野の研究への予算配分を増やす一方、研究成果については国が主導して事業化し、国際展開までつなげる体制も築く。

 こうした施策の具体化に、政府は全力を挙げるべきだ。激しい国際競争を生き延びて行くには、日本は今後も「科学技術立国」を目指すしかないからだ。

 基本政策は、厳しい財政状況の下、政府の科学技術関係予算に国内総生産(GDP)比で1%を充て、5年間で総額25兆円を投じるという目標も明記した。

 これに反対する財務省を、菅首相が「国の成長を担うのは科学技術」と押し切った。4期計画の初年度となる来年度の政府予算案でも、宇宙探査計画など科学技術分野は厚遇されている。

 ただ、今後も必要な予算を確保できるか、楽観は禁物だ。今年度までの第3期計画も同じ規模の目標を掲げたが、投資総額は21・6兆円にとどまった。

 限られた予算を効率的に使う必要がある。目標が似た研究は集約する。国立大学や国の研究機関の体制については、整理統合も視野に検討を進めるべきだ。

 総務省の調査によると、政府と民間企業を合わせた研究開発投資額は、2008年のリーマン危機以来、2年連続で減っている。

 電子機器、医薬品などの大手企業が、研究開発拠点を海外に移す動きも相次いでいる。

 経済産業省が大手製造業に実施した調査では、4割が、製造拠点だけでなく開発拠点の海外移転を検討中、と回答している。

 このように日本の科学技術を巡る状況は極めて厳しい。放置していては、日本の産業空洞化は致命的となる。その危機感を広く共有すべきだろう。

 総合科学技術会議の強化も欠かせない。現状は関係省庁の所管事業の調整に終始している。

 科学技術政策の「司令塔」として、独自に成長分野の研究目標を定め、事業予算を配分する権限を持たせるなど、大胆な組織の見直しが必要だ。

(2010年12月31日01時16分 読売新聞)

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