92.4兆円予算案決定 首相、消費増税年明けに道筋『朝日新聞』2010年12月25日付

『朝日新聞』2010年12月25日付

92.4兆円予算案決定 首相、消費増税年明けに道筋

 菅内閣は24日、2011年度政府予算案を閣議決定した。一般会計の総額は92兆4116億円となり、10年度当初予算を1124億円上回って過去最大となった。税収は3兆円増の40兆9270億円を見込むが、国の借金にあたる新規国債の発行額は44兆2980億円と、過去最大だった10年度並みを維持。2年連続で税収を上回る借金をする異常な事態だ。

 政府は、財政健全化の計画を定めた「財政運営戦略」で、新規国債の発行額と、過去の借金の利払い費を除いた歳出額を、10年度以下にする方針を決めている。11年度予算案では、その枠はかろうじて守った。厳しい財政事情を踏まえ、菅直人首相はこの日の内閣記者会のインタビューで消費税を含む税制抜本改革について「年明けの段階で方向性を示したい」と述べ、年頭会見などで消費増税の道筋を打ち出す考えを示した。

 予算案の歳出では、社会保障関係費が5.3%増の28兆7079億円となり、過去最大の規模にふくらんだ。高齢化に伴って、医療や介護、年金などにかかる費用が増えるほか、3歳未満の「子ども手当」を月7千円増額するためだ。

 民主党が掲げるマニフェスト(政権公約)に沿って、農家への戸別所得補償は、貿易自由化をにらんで畑作などにも広げる。全国の公立小学校の1年生に限って、35人学級も始める。菅直人首相が掲げる「経済成長と雇用拡大」を進めるため、国内に省エネルギーの工場をつくる企業に補助金をつけたり、求職者の支援制度も設けたりする。

 こうした財源を確保するため、道路整備などに使う公共事業関係費は、一括交付金化した補助金分を含めても実質5.1%減らすほか、海外向けの経済協力費なども削減する。

 ただ、予算のムダ削減で期待が集まった「事業仕分け」の判定で、削減につながった予算額は約3千億円。約7千億円の削減が予算に反映された10年度に比べると、半額以下にとどまった。

 歳入不足を補う税外収入は10年度より3兆4千億円ほど少ない7兆1866億円。このうち、5兆6千億円程度を独立行政法人や特別会計の剰余金といった「埋蔵金」の発掘で集めた。そのうち、2兆5千億円分を、基礎年金の2分の1の国庫負担分を維持するための財源にあてる。基礎年金の「埋蔵金頼み」は11年度限りとする。

 予算案は編成までこぎつけたものの、年明けの通常国会での審議の見通しは明るくない。衆参各院で多数派の異なる「ねじれ国会」で速やかな成立を図るためには、衆院審議の段階から野党側と協議する必要があるからだ。

 さらに、予算案の財源を裏づける税制や国債発行などの関連法案は、衆院の優越が憲法上認められていない。衆院で3分の2の多数で再可決する以外、参院で否決されれば成立のメドが立たない。菅政権の求心力が低下して野党の対立姿勢が強まる中、打開策はみつかっていない。(高田寛)

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