閣 議 決 定 平成23 年度予算編成の基本方針平成22 年12 月16 日

http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2010/h23yosan_kihonhoushin.pdf

平成23 年度予算編成の基本方針

平成22 年12 月16 日

閣 議 決 定

1  経済・社会の現状と改革への取組

日本の経済・社会は、歴史の転換点に差し掛かっている。20 年以上低迷してきた経済は、本格的な回復の軌道に乗っておらず、慢性的なデフレが続いている。何より、深刻な財政状況の下、持続可能な社会保障の整備が遅れる中、少子化・高齢化、生産年齢人口の減少は否応なく進み、社会の閉塞感、将来への不安感が高まっている。

こうした状況の下、歴史的な政権交代が実現した。そして、昨年の「予算編成の基本方針」(平成21 年12 月15 日閣議決定)でも掲げた、「人」への投資の重視、新しい公共、地域主権等の様々な改革を進めてきたが、改革はまだその途上にある。

2  平成23 年度予算編成の基本理念

平成23 年度予算は、政権交代後、新政権がゼロから取り組む最初の本予算である。

また、本年6月に、「新成長戦略」(平成22 年6月18 日閣議決定)及び「財政運営戦略」(平成22 年6月22 日閣議決定)により示した、新政権の経済・財政政策の基本的な方針の下での最初の本予算でもある。

「有言実行内閣」たる菅内閣として、この予算を、これまで先送りされてきた重要政策課題に着手し、解決していくための出発点としなければならない。とりわけ、「経済成長」、「財政健全化」、「社会保障改革」を一体的に実現し、元気な日本を復活させるための礎を築く必要がある。

(1)「成長と雇用」の実現、デフレ脱却への道筋

直近の経済情勢をみると、景気は足踏み状態にあり、失業率が高水準にあるなど、国民生活に密接に関連する雇用情勢も厳しい。

また、デフレが続いており、円高、世界経済の動向等、景気の下押しリスクの要因もある。こうした情勢に対応し、全国津々浦々の地域に根ざした元気な日本を復活させるため、平成23 年度予算は、「成長と雇用」を最大のテーマとする。今後需要が拡大していく分野を中心に、雇用を増やし、経済成長の要としていくための政策に重点を置き、景気回復とデフレ脱却への道筋を確かなものにするとともに、持続的な成長の基盤を築く。

(2)国民の生活を第一に

また、これまで十分に光が当てられてこなかった分野を含め、国民の生活を第一に掲げる、政権交代以来の理念を引き続き追求し、子ども手当の上積み、高校実質無償化の継続、求職者支援制度の創設等を着実に実施する。

(3)確固たる戦略に基づく予算編成

かつてのように、府省庁縦割りで硬直的な、無駄の多い予算配分を続ければ、持続的な成長と雇用は実現できず、借金の山だけが残り、将来の世代にツケを負わせることになる。こうした失敗を繰り返す余裕は、もはや日本にはない。既存の事業を抜本的に見直し、確固たる戦略の下に大胆に予算を組み替えていくことが不可欠である。そのため、旧政権下の施策はもとより、新政権下で採択した施策であっても、謙虚に、不断の見直しをしていく姿勢が必要である。

こうした理念の下、「新成長戦略」を着実に推進すると同時に、「財政運営戦略」に定めた財政規律の下に、成長と雇用拡大を実現する。これが、来年度予算編成、そしてその後の予算編成を通じた、菅内閣の基本方針である。

3 重点分野の基本的方向性

(1)新成長戦略の実現へ向けて

菅内閣は、急速な円高の進行等の厳しい経済情勢にスピード感を持って対応し、デフレ脱却と景気の自律的回復に向けた道筋を確かなものとしていくために、「新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策」を決定した。そのステップ1として、平成22 年度経済危機対応・地域活性化予備費を活用した緊急的な対応を行うとともに、ステップ2として、平成22 年度補正予算を編成し、成立させたところである。今後、まずはこれらの施策を速やかに実施していく。

そして、ステップ3として、平成23 年度予算における新成長戦略の本格実施を図る。政府は既に、9月以降5回にわたって「新成長戦略実現会議」を開催し、新成長戦略を強力に推進する体制を整えており、「21 の国家戦略プロジェクト」のうち、世界の潮流からみて遜色のない高いレベルの経済連携を進め、必要な国内改革を先行的に推進するとともに、総合特区制度、医療の実用化促進のための医療機関の選定制度、「新しい公共」の活動を支える新たな制度等について、平成23 年度から本格的に着手することとしている。国内投資の促進や、金融の円滑化を含めた施策を推進し、企業・産業の活力を向上させ、新たな雇用の創造を図る。

また、「元気な日本復活特別枠」の要望について、成長と雇用の観点を重視した評価付けを実施したところであり、要求・要望を通じた平成23 年度予算全体において、新成長戦略の実現のために真に有効な施策について、重点的な予算配分を行う。国家戦略室は、各府省の協力を得て、予算の概算決定後最初に開催される新成長戦略実現会議において、新成長戦略実現へ向けた施策の状況について報告するものとする。

(2)マニフェスト主要事項等の重要な政策課題

①子ども・子育て支援

子どもは、この国の将来を担う宝であり、今後日本の社会の活力を維持していくためにも、少子化対策・子育て支援は喫緊の課題である。

子ども手当については、関係5大臣会合における議論に基づき、上積みを行う方向で検討する。上積みは3歳未満の子どもを対象とし、その金額は月額7,000 円を目安としつつ、恒久財源の確保との見合いで検討する。地方負担の在り方を含む財源構成については、国の財源の状況、「控除から手当へ」の考え方、昨年の関係4大臣合意の趣旨等を踏まえつつ、地方自治体の意見も聞きながら成案を得る。

また、保育所などの現物サービスを充実させる中で、「待機児童解消「先取り」プロジェクト」への対応を行う。

②農業予算

菅内閣は、「国を開く」方針の下、「包括的経済連携に関する基本方針」(平成22 年11 月9日閣議決定)を決定し、経済連携の推進と農業の再生を両立するための方策について、「食と農林漁業の再生推進本部」、「食と農林漁業の再生実現会議」において検討することとしている。

そして、平成23 年度予算から、農業の体質強化、6次産業化に重点を置いた一歩を踏み出すことを明確に示すため、関係4大臣会合の議論を踏まえた諸施策を行う。農地の規模拡大による競争力強化を進めるため、流動化を促進する方策を検討する。戸別所得補償制度においては、規模を拡大させる行為に着目した加算の導入を検討し、それと併せて、他の加算措置や助成内容等について精査する。また、農林水産品の輸出拡大や、6次産業化による農業・農村活性化等へ向け政府を挙げて取り組む。

③一括交付金

歴史の転換点に立つ、日本の経済・社会の新たな有り様を政府は示すとともに、地域の自由裁量を拡大するため、「ひも付き補助金」を段階的に廃止し、一括交付金化に着手する。第一段階として、投資補助金を所管する全ての府省が平成23 年度から、投資補助金の一括交付金化に取り組み、「地域自主戦略交付金」(仮称)を創設することとする。

同交付金の規模は、平成24 年度には1兆円強を目指すが、平成23 年度は都道府県分を対象とし、その半分程度の規模を目指す。内閣府予算として計上し、当面は継続事業が実施できるよう配意しつつ、客観的指標による配分を導入するものとする。

④雇用対策

雇用対策は、菅内閣が最も重視する政策の一つである。厳しい雇用情勢に迅速に対応し、新卒者就職支援など、雇用戦略対話における合意も踏まえ、「3段構えの経済対策」のステップ1、ステップ2と一体となった雇用対策を推進する。

また、雇用保険を受給できない求職者に対する恒久的な制度(第二のセーフティネット)として、求職者支援制度の創設に向け検討を進め、次期通常国会における法制化を目指す。

雇用保険に係る国庫負担割合を法律の本則(給付総額の4分の1)に戻すことについては、安定財源の確保との見合いで検討する。

4 徹底した予算の組替えと無駄の削減

(1)元気な日本復活特別枠の配分基本方針

平成23 年度予算においては、「平成23 年度予算の概算要求組替え基準について」(平成22 年7月27 日閣議決定)に基づき、府省庁の枠を超えて予算を大胆に組み替え、元気な日本を復活させるための施策に重点配分を行う仕組みとして、「元気な日本復活特別枠」(以下「特別枠」という。)を設定する。

特別枠への要望については、「組替え基準」を踏まえ、「元気な日本復活特別枠に関する評価会議」において、政策の評価が行われた。特別枠の予算配分は、この評価を基本としつつ、内閣総理大臣が、当該事業が成長と雇用の拡大に資するかどうか、国民生活の安定・安全の観点から必要であるか等、政権としての重点や、国民の要請を踏まえ、思い切ったメリハリ付けを行い決定する。

(2)事業仕分けの適切な反映

事業仕分けは、予算編成過程を可視化し、国民目線に立った事業の見直し・無駄の削減を行うことによって、行政の在り方に大きな一石を投じた。これまでの事業仕分けの対象となった事業については、その結果を予算査定に適切に反映させるものとする。その際、担当大臣は広く国民の納得が得られるように十分な説明責任を果たしつつ、指摘された事業の見直しが確実に行われていることを担保する。また、事業仕分けの対象とならなかった事業についても、行政刷新会議で示された方向性を参考に、横断的に事業の見直しを行う。

(3)独立行政法人の事務・事業の見直し等

独立行政法人については、事業仕分けの評価結果や「独立行政法人の事務・事業の見直しの基本方針」(平成22 年12 月7日閣議決定)を踏まえ、事務・事業の見直し、資産・運営等の見直しを確実に行う。また、不要な利益剰余金等について、確実かつできるだけ速やかに国庫納付を行うこととし、こうした歳入は一時的・特例的なものであることを踏まえつつ、厳しい財政事情の下、できる限りの活用を図るものとする。

政府系の公益法人についても、同様に、事業仕分けの評価結果等を踏まえ、各大臣は、事務・事業等の見直しを確実に行うとともに、指導監督を徹底する。

(4)国家公務員人件費等の抑制・削減

「人件費」については、日本全体の大きな課題である。その認識に立ち、平成23 年度予算及びそれ以降においても、各大臣において抑制・削減に取り組むと同時に、政府全体でも抑制・削減に全力で取り組む。なお、今後の国家公務員等の給与改定については、「公務員の給与改定に関する取扱いについて」(平成22 年11 月1日閣議決定)に沿って、次期通常国会に、自律的労使関係制度を措置するための法案を提出し、交渉を通じた給与改定の実現を図るとともに、その実現までの間においても、人件費を削減するための措置について検討し、必要な法案を次期通常国会から、順次、提出する。また、メリハリのある定員配置を実現しつつ、新規増員を厳しく抑制することにより定員の純減を可能な限り確保する。

5  財政運営戦略の着実な実現

平成23 年度予算は、財政運営戦略及び中期財政フレームの下で編成される最初の本予算であり、財政健全化へ向けた日本政府の姿勢を示すものとして、内外の市場関係者も注視している。市場の信認を確保していくため、財政運営戦略・中期財政フレームに定めた規律の下に、財政健全化目標達成へ向けた第一歩とする。

(1)新規国債発行額

平成22 年度当初予算における新規国債発行額約44 兆円は、過去最高の水準である。平成23 年度当初予算における新規国債発行額は、平成22 年度当初予算の水準を上回らないものとするよう、全力をあげる。

(2)基礎的財政収支対象経費

基礎的財政収支対象経費については、中期財政フレームに定めるとおり、平成22 年度当初予算の水準である約71 兆円(「歳出の大枠」)を上回らないものとする。これを達成するためには、特別枠への要望額の相当程度の絞り込みや、マニフェスト施策財源見合検討事項についての調整を行うことが不可欠であり、要求全体の更なる精査・削減と併せて検討する。

なお、基礎年金国庫負担については、法律上、税制抜本改革によって所要の安定財源を確保することが、国庫負担割合を2分の1とする前提条件であるが、平成21 年度及び平成22 年度は臨時の財源を手当し2分の1としている。平成23 年度においても、単年度限りの措置として、臨時の財源を手当てし2分の1を維持する方向で検討する。

(3)今後の検討課題

①財政運営戦略の進捗状況の検証等

国家戦略室は、関係府省の協力を得て、年明け後早くに、平成23 年度予算までの状況を踏まえ、財政健全化目標を始めとする財政運営戦略の進捗状況の検証を行い、公表するものとする。平成23 年半ば頃、中期財政フレームの改訂を行い、平成24年度から平成26 年度までを対象とする新たな中期財政フレームを定める。この際、現行の中期財政フレームに定める歳入・歳出にわたる取組は維持することを基本とするが、財政運営戦略の進捗状況の検証等を踏まえ、必要があれば、財政健全化への取組を加速することも含め検討する。

②社会保障と税の抜本改革

新成長戦略、財政運営戦略の実施と不可分であるもう一つの重要政策課題は、社会保障改革である。少子高齢化が進む中、国民の安心を実現するためには、「社会保障の機能強化」とそれを支える「財政の健全化」を同時に達成することが不可欠であり、それが国民生活の安定や雇用・消費の拡大を通じて、経済成長につながっていく。

「社会保障改革の推進について」(平成22 年12 月14 日閣議決定)に基づき、社会保障の安定・強化のための具体的な制度改革案とその必要財源を明らかにするとともに、必要財源の安定的確保と財政健全化を同時に達成するための税制改革について一体的に検討を進め、その実現に向けた工程表とあわせ、平成23 年半ばまでに成案を得、国民的な合意を得た上でその実現を図ることとする。

③予算・行政に関するPDCAサイクルの充実

行政支出の無駄を減らし、限られた予算を真に国民に便益をもたらす施策に配分するためには、予算に関するPDCA(Plan-Do-Check-Action:計画・実行・検証・反映)のサイクルを充実し、施策の有効性、効率性について不断の検証を行っていくことが不可欠である。既存の政策評価制度と行政事業レビューの役割分担の明確化・連携強化や、「予算編成等の在り方の改革について」(平成21 年10 月23 日閣議決定)に掲げられた政策達成目標明示制度等の施策の取扱いを含め、関係府省・部局において政府全体におけるPDCAサイクルの整理・強化について検討を行う。

Proudly powered by WordPress   Premium Style Theme by www.gopiplus.com