2010 年12 月6 日
H23 年度予算に関わる民主党「提言」
民 主 党
1.基本的な考え方
民主党にとって初めての本格的な編成となるH23 年度予算の最大の目標は「デフレを脱却し、経済と雇用の拡大を実現すること」「『国民生活が第一』の観点から、子ども手当の上積み、高校無償化の継続、求職者支援制度の創設などを着実に実現すること」である。
現下の厳しい経済状況、国民生活に的確に対応し、「官を開き、国を開き、未来を拓く」ことで将来の成長への布石を着実に打つと共に、国民との約束であるマニフェストの実現に向けてギリギリまで邁進しなければならない。また、国民の税金の使い方への不信を払拭するため、ムダづかいの根絶に邁進することは当然である。
数多くの課題を抱える予算ではあるが、これらを政治主導で真正面から取り組むことで克服した上で、年内に確実に予算を編成することが至上命題であり、この点を強く政府に要請する。
2.H23 年度予算の基本方針
(1)デフレ脱却を含む経済成長のスタートを切る
デフレ脱却を含む経済成長を着実に実現するため、6 月に閣議決定した「新成長戦略」を、H23 年度予算において本格的に実現に移さなければならない。その一環として、今回始めた予算編成に取り入れた「元気な日本復活枠」について、その主旨を十分に活かした予算配分を行うことが重要である。また、要求枠についても需要・雇用の創出効果の高い政策に重点的に予算配分を行う必要がある。
(2)マニフェスト実現にむけたギリギリの努力
09 年衆議院選挙マニフェスト及び10 年参議院選挙マニフェストは国民との約束であり、民主党政権の政策的な基盤であることから、恒久的財源の確保と合わせて、その実現に向けてギリギリまで努力をしなければならない。
09 マニフェスト「工程表」で実施時期を明記した「求職者支援制度」、民主党政権の「1 丁目1 番地」とも言える地域主権改革の主要政策である「一括交付金」、グローバルな課題である温暖化対策の一環である「地球温暖化対策税」の導入などは、H23 年度に実現すべきである。
(3)引き続き、ムダづかいの根絶に邁進する
政権交代直後から取り組んでいる「事業仕分け」に対する国民の関心、期待は高い。本年は、春に独法・公益法人を対象とした「仕分け第2 弾」を実施し、秋に特別会計及び過去の仕分け対象事業を対象とする「仕分け第3 弾」を実施した。また、各省においても「行政事業レビュー」という形で自己仕分けを進めてきた。
独法や公益法人などの不要な剰余金の返還や特別会計の見直しなど、これらの仕分け結果を、H23 年度予算に着実に反映させることが国民の信頼を回復させる道である。
特に、秋の事業仕分けは党としても全面的な協力を行ったことから、党も一定の責任を負っており、仕分け結果が確実に予算に反映されることを期待する。また税金を最大限有効に活用する観点から、「PDCA サイクル」を予算の編成・執行の過程に根付かせることや行政に係わるコストの見直しが重要である。
(4)「財政運営戦略」を堅持する
6 月に政府が閣議決定した「財政運営戦略」では、「2020 年の基礎的財政収支の黒字化」という目標を掲げた上で、来年度予算については「基礎的財政収支対象経費」及び「新規国債発行額」がH22 年度を上回らないことというルールを定めた。
財政健全化に向けた不断の努力、市場へのメッセージという観点から、このルールは堅持しなければならない。
(5)改革を断行するため、メリハリの効いた予算をつくる
上記のような課題を克服するためには、これまでの「対前年度主義」を排し、省庁別の予算シェアに囚われない大胆な予算配分を行う必要がある。国民生活の向上、成長戦略の実現等に効果の高い政策に予算を重点的に配分する一方で、必要性の乏しい事業、効果の乏しい事業の予算を削減し、メリハリの効いた予算とすることを強く要請する。
3.主要事項の取り扱い
(1)「特別枠」要望の取り扱い
すでに決定した「政策コンテスト」に係わる特別枠要望分の評価は党の意見を概ね反映しているものであるが、今後の特別枠への予算配分においても、さらに国民の声、党の意見を踏まえたものとして頂きたい。
(2)子ども手当
参議院選挙マニフェストに掲げた「財源を確保しつつ、子ども手当を1 万3000円から上積みする」を確実に実施することとし、上積みにあたっては実質手取額の逆転現象を解消することに、まず取り組むべきである。この際、子ども手当は一律給付が原則であるが、特に必要と認められる年齢層に対する額の上乗せもやむを得ないと考える。
極めて厳しい財政状況を踏まえて、子ども手当の上積みの財源については配偶者控除の見直しを含めて検討すべきであるが、給付に係わる所得制限は行うべきではない。
また、支給要件に国内居住を課すと共に、児童養護施設などに入所している子どもへ、より安定的な給付ができるよう検討することを要請する。
(3)一括交付金
一括交付金はH23 年度予算でスタートすべきである。
自治体が各府省の枠を超えて自由に使い道を決めることができることを基本とし、H23 年度においては、マニフェストに基づき、投資に関する補助金等のうち、相当程度を一括交付金化することを求める。
また配分基準には客観指標を用いることを基本とするが、条件不利地域については一定の配慮を行うと共に、初年度であるH23 年度については継続事業への配慮を行うべきである。
なお総額の算定においては、一括交付金化の結果として可能となる自治体の事務の合理化等を一定程度勘案すべきである。
(4)農業関係予算
政府は11 月に包括的経済連携に関する基本方針を決定したことを踏まえ、H23 年度における農業予算は農業の体質強化、6 次産業化に重点を置いた一歩を踏み出すことを明確に示さなければならない。概算要求後に農業を巡る環境が変化したことを踏まえ、必要な対応を柔軟にとる必要がある。経済連携の進捗如何に関わらず、我が国の農業には大胆な改革が求められている。H23 年度予算は、この大胆な改革の第一歩としなければならない。
(5)求職者支援制度
雇用と生活を確保するために重要な「第2 のセーフティネット」としての求職者支援制度は、衆議院選挙マニフェストの「工程表」において、H23 年度スタートを明記していることから、次期通常国会において確実に関連法案を成立させることは必須である。
(6)雇用保険国庫負担の本則化
雇用に関する国の役割を明らかにし、雇用保険財政の基盤を強化するために雇用保険に係わる国庫負担割合を法律の本則に戻すことは重要な課題である。安定財源を確保した上で、その実現を図らなければならない。
なお、事業仕分けで指摘を受けた雇用保険2 事業については、現下の厳しい雇用状況に配意しつつ、より効率的に事業目的を達成する手法に改善すること。
(7)待機児童解消「先取り」プロジェクトの実施
総理の特命で取りまとめられた標記プロジェクトは、待機児童解消が喫緊の課題であり、また雇用増に一定の役割を果たすことが考えられることから、報告に則り、H23 年度から確実にスタートすべきである。
なお本プロジェクトは概算要求に含まれない予算を必要とするものであるが、待機児童解消や雇用増の重要性に鑑み、待機児童解消効果の高い施策の実施のため必要な対応を積極的にとる必要がある。
(8)基礎年金国庫負担の確保
年金に関する国民の不安・不信を増大させると共に、免除者を中心に年金支給額が減額される恐れがあることから、基礎年金に係わる国庫負担割合を現在の1/2 から引き下げることは認められない。政府はH23 年度予算における国庫負担割合の維持に向けて、万全の努力を行うべきである。
(9)離島におけるガソリン価格の実質的な引き下げ
地政学上の観点を含めて離島の振興を図るため、本土に比べて割高なガソリン価格を実質的に引き下げる措置を講じること。
4.重点分野
H23 年度予算において重点を置くべき分野等に関する意見は添付の通りである。政府においては、今後の予算編成にあたって、この意見を十分に留意されたい。
以上
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事務局補足
添付資料は以下のURLを参照
http://www.dpj.or.jp/news/files/101206jyutenbunya_bumoniken2.pdf