『日本経済新聞』2010年12月4日付
中国地方の産学官、次世代車へ域内連携次々
中国地方で自動車産業の競争力強化に向けた連携の動きが一段と活発になってきた。広島大学と近畿大学は3日に包括協定を結び、主に次世代自動車の開発分野で共同研究や人材育成などに取り組む。産学官で自動車の次世代技術の開発テーマを検討する試みも始まった。地域の知的資源の活用により、環境や安全性能向上など次世代自動車に求められる技術開発や製品化を促す。
広島大と近大はともに東広島市に工学系の研究拠点を置く。近大工学部は今年4月、自動車技術の研究を中心に据えた「次世代基盤技術研究所」を本格稼働。広島大学でも来年4月、県下の7大学や企業、行政との共同研究拠点として、霞キャンパス(広島市)に医学と工学を連携させたものづくりの研究拠点を新設する。
いずれも10億円弱を投じて実験設備などの導入を進めており、両施設の相互利用を進める。近大の京極秀樹工学部長は「2つの拠点を中心に、マツダや関連企業との連携もさらに深められる」とみている。
両大学は来年度にも共同講義の開設や大学院の単位交換などを始めるほか、共同の研究プロジェクトも拡大する。「従来も教員間で個々の共同研究はあったが、さらに幅広い分野で成果を出したい」(広島大の浅原利正学長)考えだ。
中国地方の各大学や研究機関がマツダやその関連メーカー向けに、次世代自動車向けの技術を提案する「シーズ発信会」も9月に開かれた。中国経済産業局が主催し、「知能化」「電動化」などのテーマで51の技術を紹介した。
マツダ側が部品メーカーや研究機関向けに、新たに取り組みを求める技術テーマを提示した7月の「ニーズ発信会」を受けた取り組み。マツダでは「2~3年後に成果を期待できる技術もあった。地場で産官学がかみ合えば開発を効率化できる」(マツダ車両開発本部の松岡孟主幹)と期待する。
自動車開発はすそ野が広く、車の性能が進化するなかで自動車メーカーや部品企業が独力で対応するのは難しくなっている。大学もそれぞれの研究成果を生かした地域貢献などが求められており、今後も連携の動きが加速しそうだ。