事業仕分け結果の詳報 共同通信配信記事2010年11月18日付 

共同通信配信記事2010年11月18日付

事業仕分け結果の詳報 

 行政刷新会議の「再仕分け」最終日の結果詳報は次の通り。

 ▽グループA

 【宇宙航空研究開発機構(文部科学省)】2013年度に1・5倍に膨らむ資金計画をめぐり、仕分け人は、ビジネスにつながる開発計画は民間の応分な負担が期待できることを着手の条件とするよう提案。随意契約や1者だけが応札するケースが多いとして、さらなるコスト削減努力を求めた。1900億円の概算要求に対し、11年度以降も10年度当初予算(1800億円)の水準を維持すべきだと判定した。

 【競争的資金(同)】各府省の研究関連事業の調整などを目的とする科学技術振興調整費(要求額281億円)に質問が集中。必要に応じてから各府省の予算に移し替えられるのが特徴だが、ここ数年の実績はわずかで、仕分け人は「歴史的使命を終えたのでは」と指摘。継続事業の終了後に廃止と判定した。ほかの競争的資金も「似たような制度を集約するよう昨年求めたが、改善が不十分」として、全体として1割程度の予算縮減とさらなる集約を求めた。

 【大学関係事業その1(同)】大学院の研究拠点を支援するグローバルCOEプログラム(264億円)は「予算の3分の1削減を求めた過去の議論が反映されていない」と仕分け人が反発、確実な実施を求めた。政府の新成長戦略に基づき新規要求した、優れた人材を輩出する大学院の構築を目指す博士課程教育リーディングプログラム(51億円)は、COEプログラムの衣替えで、大学が取り組むべき改革の内容が不明確として「見直し」と判定した。

 【大学関係事業その2(同)】(1)実践的な専門教育による就業能力向上(29億円)(2)今後の成長分野に対応した教育カリキュラム開発など(72億円)(3)地域に根差した雇用に直結した人材養成(37億円)―を主な目的とする3事業はいずれも廃止と判定された。就業能力向上には「大学の通常予算で行うべきだ」との指摘や、財政力のある大学も支援対象となることへの批判が出た。成長分野対応も「旧態依然のカリキュラムを変える効果があるのか」と疑問視された。

 【大学関係事業その3(同)】英語で学位が取れるコースの設置を進める国際化拠点整備事業(35億円)と、米中韓の大学と単位互換を促す世界展開力強化事業(30億円)について、仕分け人は事業目的を認めつつも「コストが極端に高い」「将来的なビジョンが見えない」などと指摘し、ともに予算配分などを白紙から見直すべきだと判定した。

 【公営ギャンブル関係事業(農林水産省など)】日本中央競馬会(JRA)、JKA(旧日本自転車振興会)、日本船舶振興会が行う助成事業をめぐり、仕分け人は「中抜き法人」の排除と、関係団体からの天下り完全排除を求めた。またJKAが前回の仕分け後、官僚OBのいる公益法人への助成事業を大幅に減らしたことを挙げ、他の2団体にも改革を要請。費用対効果が見られない事業については、助成率を原則5割に抑えるよう求めた。

 【国立病院機構運営費交付金(厚生労働省)】機構側はブロック事務所廃止に向けたスケジュールを本年度内にまとめるなどの改善策を説明したが、仕分け人は多額の経常利益が出ており、診療報酬改定の影響などでさらに収益が上がる見込みなのに、なぜ国の交付金が必要なのかと追及。機構側は新規の設備投資が必要だとしたが、具体的な投資計画は示せず「計画が見えず、本当の収支状況が分からない。判定のしようがない」とされた。仕分け人は具体的な計画を立て第三者の検証を経た上で説明できる体制を整えるよう求めた。

 ▽グループB

 【港湾民間拠点施設整備事業(国土交通省)】NPOなどが行う港湾関連施設整備を支援する「住民参加型まちづくりファンド支援業務」に同省は民間都市開発推進機構を通じ助成しており、11年度の要求額は1億円。民都機構の常勤役員8人のうち7人が官庁OBで、仕分け人は「天下り団体を食べさせるために(事業が)続いている」などと問題視。「街づくりが進むような波及効果があるとは思えない」などとして廃止と判定した。

 【大規模自転車道(同)】地方自治体が社会資本整備総合交付金を活用し、景勝地や観光施設などを結ぶレクリエーション道路として整備しており、全国約4300キロの計画のうち、09年度末で約3600キロが整備済み。財政状況が厳しい中で「レクリエーションより都市部の自転車利用の安全確保に力を入れるべきだ」などの批判が出て、判定では、事業目的が現在のニーズに合っているか国が再検証し結果を地方に伝えるよう求めた。

 【農業・食品産業技術総合研究機構の2事業(農水省)】同機構が実用化・実証段階の研究を企業に委託する民間研究促進事業(26億円)を「廃止」と判定。研究成果を使った企業が売り上げの一部を機構に返済する仕組みに「欠損金を出さないで済むのか」などの疑問が出た。基礎研究を公募し大学や企業に委託する基礎的研究事業(59億円)は、機構傘下の独立行政法人が応募した案件への「資金配分を止める」と判定した。

 【学校給食用牛乳等供給推進事業交付金(同)】国産牛乳を小中学校の給食に安定的に供給するための事業で、離島など遠隔地向けの単価が平均より高くなる場合、交付金で一定程度を補助している。仕分け人からは「消費確保の重要性は理解する」との声の一方で、「生徒数が減少する中で供給維持を図るのはおかしい」との意見が出た。農水省は普及啓発経費を削減するなどの見直し実績を強調したが、12億円の要求額を最低でも2割縮減すべきだと判定。

 【森林資源の活用(同)】稲わらやサトウキビを原料とする燃料や電気の生産コストの削減を研究するバイオマス利用技術の開発(16億円)、間伐後に搬出されず森に残される丸太を燃料に使う森林資源活用型ニュービジネス創造対策事業(2億円)は、技術開発が成功した際の具体的な効果が示されるまでは予算計上見送りと判定。排出量取引で山村と都市を仲介する山村再生対策構築事業(2億円)は「市場に任せるべきだ」などとし、国の事業として廃止と判定した。

 【バイオマス関連3事業(同)】東アジア等におけるバイオマス利活用推進(3100万円)と、家畜排せつ物のメタンガス抑制などを排出量取引につなげる環境バイオマス総合対策推進(3千万円)は「他国に勧められる状況ではない」などと批判され廃止と判定。稲わらなどを燃料として活用するバイオマス・再生可能エネルギー総合対策(71億円)は事業を絞り込むべきだとして「予算計上見送り」とした。

 【情報処理推進機構(経済産業省)】同機構の最先端のネットワーク技術、オープン・クラウド環境整備(4億円)は「業界で実施するべきだ」として廃止、情報セキュリティー対策の推進(1億円)は「予算縮減」と判定された。情報システムの信頼性向上(8億円)、高度IT人材の育成(8億円)は「独立行政法人で実施するメリットを感じない」との意見が噴出し、民間での実施を要求した。

 【中小企業基盤整備機構(同)】経産省が同機構の余剰資産約2千億円の国庫返納を“逆提案”し了承された。機構の資産は今年4月の事業仕分けで「2千億円程度をお返しいただく」と結論付けられていた。この日の再仕分けで田嶋要政務官が「(4年計画で)2千億円に近づける形で納付をしたい」と提案。取りまとめ役が「仕分ける前に積極的な提言をいただき感謝する。速やかに返していただきたい」と締めくくった。

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