政策コンテスト 真価問われる「政治主導予算」『愛媛新聞』社説2010年11月10日付

『愛媛新聞』社説2010年11月10日付

政策コンテスト 真価問われる「政治主導予算」

 「政治主導の予算」と呼べるものが本当に生まれるのか―。政府の評価会議(議長・玄葉光一郎国家戦略担当相)はきょうから3日間、2011年度予算編成で1兆円超の「元気な日本復活特別枠」の配分を決める「政策コンテスト」の公開ヒアリングを初めて実施する。

 事業に4段階の優先順位をつける会議の様子は、インターネットで公開される。玄葉氏は事前に「パフォーマンスでなく淡々とやる」と語っていたが、「国民に開かれた透明な予算編成」を印象づけたい狙いは明白。とはいえ、編成作業をオープンにし、政治判断の是非や責任を世に問う姿勢は評価できるだろう。

 一方で、この政治ショーが主眼である「脱官僚主導」や「大胆な予算の組み替え」に直結するかといえば、甚だ疑わしい。事業仕分け同様、重要なのは結果。今回の選別が年末の予算編成にきちんと反映されるよう「政治の意思」を貫き通せるかどうかは、菅直人政権の命運をも左右しかねない試金石となるはず。今後の展開を注視したい。

 これまでのところ、官が政に協力的とは到底思えない。むしろ、政権不信に起因する猛烈な抵抗に遭っている。

 政府は、概算要求の段階で全省庁に原則一律10%減を指示。しかし、総額は逆に過去最大の約94兆7千億円に膨れ上がり、特別枠に浮いた財源を回す思惑も外れた。

 しかも、国債費を除く一般会計歳出約72兆円超(要求段階)のうちの1兆円超にすぎない特別枠に、189事業、総額2兆9千億円の要望があった。玄葉氏は「最終的に2兆円にしたい」と増額を示唆しているが、削りにくいからといって枠を取り払えば、財政健全化どころか歯止めなき支出増につながってしまう。

 百歩譲って、要望が「経済成長や雇用増加につながる分野」という特別枠のテーマに沿った意欲的な提案であればまだ、枠拡大の検討の余地はあるかもしれない。しかし、各省庁の要望には、趣旨をあえて無視、曲解したとしか思えない内容が目立つ。

 防衛省の在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)、文部科学省の公立小教職員給与費の国庫負担分の一部…。削減不可能と見越した要望は意図的。また「国民の声」を聞こうと政府が実施した意見公募には、約36万2千件もの意見が寄せられたが、うち8割は文科省に肯定的な組織票とみられるという。政治の稚拙さを巧妙に突かれている。

 「あれもこれも」が困難な厳しい財政状況の中で、徹底して無駄を省き、浮いた予算を成長分野に集中する、との理念は正しい。問題は、実行力。政治への信頼を勝ち取れるかどうか、いよいよ現政権の真価が問われる。

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