予算特別枠 給与要望 文科省など批判『東京新聞』2010年11月11日付

『東京新聞』2010年11月11日付

予算特別枠 給与要望 文科省など批判

 政府は十日、二〇一一年度予算で設けた一兆三千億円余の「元気な日本復活特別枠」の事業を決める政策コンテストの公開ヒアリングを開始した。初日は文部科学、農林水産両省など五省庁が政策の目的や効果を説明。既存の予算の一部を特別枠に付け替えた形での事業要望も多く、政府側から厳しい指摘が相次いだ。

 各府省へのヒアリングは、閣僚らで構成する政府の評価会議(議長・玄葉光一郎国家戦略担当相)が行った。特別枠の一兆三千億円余に対して、要望総額は約二兆九千億円に達しており、玄葉国家戦略相は冒頭、「極めて厳しい(絞り込み)作業になる」と話した。

 この日のヒアリングでは、全世帯にブロードバンド通信を普及させる総務省の「光の道構想」や、農水省の土地改良予算の増額などに対して、評価会議のメンバーから必要性を疑問視する意見が続出。教員の給与の一部を特別枠に回した文科省は、要望額が全体の約三割を占め「厳しい評価にならざるを得ない」と指摘を受けた。

◆大胆な組み替え 期待薄

 二〇一一年度予算案の「特別枠」の事業を決めるため、十日から計三日間の日程で始まった政策コンテスト。閣僚や民主党政調幹部で構成する評価会議が各府省の政務三役に意見聴取した上で、最終的に政治家が予算の優先順位を付ける仕組みだが、実際に大胆な組み替えをできるのかは疑わしい。

 玄葉光一郎国家戦略担当相は会合の冒頭で「新しい試みで目指すのは予算編成の透明化だ。密室で査定していた予算編成を国民本位にする」と強調した。

 コンテストでは各府省が要望した百八十九事業、計二兆九千億円を優先度の高い事業からA~Dに判定。今月下旬に評価結果をまとめ、菅直人首相が一兆円超の事業の予算配分を決定する。やりとりをインターネットで公開しており、事業仕分けに続く政治主導の象徴にしたい考えだ。

 しかし対象事業の多くは「政治主導の予算編成の体現」との触れ込みにはほど遠い。新規政策や効果の高い政策を募ったにもかかわらず、国際協力機構(JICA)運営費交付金など十二事業は、十五日から実施する事業仕分けの対象。九事業は行政刷新会議から「改善が必要」と指摘され、二十一事業は無駄と疑われているものだ。

 防衛省の在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)や文部科学省の公立小学校の教員給与など、削りにくい義務的な経費も計上されている。評価会議の一人は「そもそも特別枠で要望するのがおかしい事業がかなりある」と憤り、十日の総務省からの意見聴取では「趣旨が違う。大幅に削減させてもらう」との声も上がった。

 各省が要望を通そうと、民主党議員に働き掛ける動きもある。官僚側の思惑の入った要望をどうさばいて特別枠を編成するか。首相の指導力が問われる。 (後藤孝好)

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