政策コンテスト:開始 「特別枠」各省が争奪 評価会議、大幅絞り込みへ『毎日新聞』2010年11月11日付

『毎日新聞』2010年11月11日付

政策コンテスト:開始 「特別枠」各省が争奪 評価会議、大幅絞り込みへ

 政府は10日、11年度予算の配分で各省が政策を競い合う「政策コンテスト」の公開ヒアリングを内閣府で始めた。新成長戦略などの施策に予算を重点配分するため設けられた「元気な日本復活特別枠」向けに各省が要望した189事業が対象で、初日は文部科学、農水、総務など5省庁の政務三役が事業の意義や政策効果を説明。事業の優先順位付けを行う評価会議(議長・玄葉光一郎国家戦略担当相)のメンバーが、「特別枠の趣旨に合うのか」などと切り込んだ。【谷川貴史、行友弥、坂井隆之】

 「マニフェスト(政権公約)に掲げた少人数学級を推進したい。『コンクリートから人へ』の理念を実現するため、大胆な予算の組み替えが必要だ」。鈴木寛・副文科相は、教育予算の充実を訴えた。

 特別枠向けに各省が要望した189事業の総額は2・9兆円。しかし、現時点で見込まれる財源は約1・3兆円に過ぎず、絞り込む必要がある。政策コンテストの結果によっては、要望が大幅に削り込まれる可能性があるだけに各省は必死だ。

 この日、評価側から批判が集中したのは文科省。特別枠向けの要望額は、各省の10年度予算を一律1割削減した額に相当するが、1割以上削減した分はその3倍を上積みできるルールがある。文科省はこの3倍ルールを積極活用して、全体の要望額の約3割を占める8628億円を要望している。

 平野達男副内閣相は「継続事業を打ち切り、新たな事業として特別枠に要望している」と指摘。小学1~2年生を対象に35人学級実現を目指す事業では、対象となる教員の人件費を一度削減したことにし、新規事業として特別枠に乗せていたことを明らかにした。

 文科省は教育予算の大半を人件費が占め、既存予算の1割削減が困難なことからの苦肉の策だが、予算組み替えを目指す特別枠の意義が揺らぎかねない。桜井充副財務相は「厳しい判断をせざるを得ない」と切り捨てた。

 農水省のヒアリングでは、農業者戸別所得補償制度の本格実施(コメから畑作への拡大)が俎上(そじょう)に載せられた。評価側からは「どの農業分野に力を入れるといった全体の絵があるのか」(桜井副財務相)との指摘もあった。

 ◇議論浅く、消化不良

 12、13日にも開催されるヒアリングは「事業仕分け」と同様、インターネット上で公開され、玄葉氏は「予算の透明化、見える化を図り、国民の理解を深めたい」と意義を強調する。しかし、政策の効果などについて議論が深まったとは言えず、「消化不良」の感はぬぐえない。

 総務省は34件、文科省は10件の要望事業を抱えているが、各省に割り当てられた持ち時間はわずか30~45分。政務三役は優先順位の高い事業のポイントを説明するのがやっとだ。一方、評価側の質問も1省庁につき3、4回程度と少なく、平岡秀夫副総務相は終了後、「パフォーマンスに終わる評価会議でなく、中身も精査してほしい」と注文をつけた。

 評価会議は12月初めまでに各要望事業をA~Dの4段階で評価し、最終的には菅直人首相が配分額を決定する。特別枠を巡る争奪戦が激しくなる中で、国民への説明責任を果たしつつ、各省の利害を超えて優先度の高い事業への予算の重点化が図れるかが問われそうだ。

==============
 ■ことば
 ◇元気な日本復活特別枠
 予算を大幅に組み替えることを目的に、民主党政権が11年度予算編成で導入した予算枠。各省が概算要求を10年度予算比で一律1割削減して捻出(ねんしゅつ)した財源のうち、「1兆円を相当程度超える額」を、新成長戦略や民主党マニフェストなどの関連政策に重点的に振り向ける。
==============

 ◆10日の政策コンテストで議論された主な要望◆
 (カッコ内は要望額、単位・億円)

 <総務省>
「緑の分権改革」推進プロジェクト(20)
「光の道」整備推進事業(30)
情報通信技術国際競争力強化(120)

 <文部科学省>
小学1、2年生の35人学級実現(2247)
安全で質の高い学校施設整備(1898)
強い人材育成のための大学機能強化(1200)

 <農林水産省>
畑作物の所得補償交付金(1080)
戸別所得補償実施円滑化基盤整備(238)
森林・林業再生プラン推進総合対策(431)

 <外務省>
アフガニスタン支援(72)
インフラ、環境技術の海外展開支援(295)

 <警察庁>
治安水準向上のための総合対策(243)
安全・快適な交通環境実現(14)

Proudly powered by WordPress   Premium Style Theme by www.gopiplus.com