文系学生も数学必修…大阪府立大 2012年度から論理的思考養う 行列や微積分『読売新聞』2010年10月26日付

『読売新聞』2010年10月26日付

文系学生も数学必修…大阪府立大 2012年度から
論理的思考養う 行列や微積分

 数字を暮らしに生かす「数学的素養」が低下している現状を改善しようと、大阪府立大(堺市)は2012年春から、文系の全学生に教養科目で数学の単位取得を義務付け、卒業まで数学力が衰えないよう自己管理させる。文部科学省は「文系全学生に数学を必修にする大学は聞いたことがない」という。大学全入時代を迎え大学教育が易しくなる傾向の中、入学を敬遠する受験生が出る恐れもあるが、あえて数学を身に着けさせて社会に送り出すための取り組みといえる。

 12年春予定の学部再編で現在の経済、人間社会両学部(学生数約2100人)が統合される「現代システム科学域(仮称)」の学生が対象。受験生には一般入試で数学を課し、新入生は高校2年程度の数学を復習した後、文系学生の多くが高校時代に選択しない微分積分や線形代数(行列)を学ぶこれらの単位を取らないと卒業できない。

 2年で基礎的な統計学の講義を行い、到達度試験を実施。3、4年では、数学の知識を維持できているか、自己評価させる。理系学生向けに05年に開設した「数学質問受付室」やネット上の「自習サイト」の機能を強化、きめ細かく指導する。

 岡本真彦准教授(数学教育)は「多くの教官が、学生の論理的思考はどんどん低下していると実感したことが数学必修化につながった。数字を読み解く力があるかないかで、思考の質に大きな差が出る」と語る。

 文系での数学教育は、九州大が経済学部のみで単位取得を義務付ける。京都大は、数学の知識を持つことが望ましい経済、教育両学部の学生に数学の受講を強く勧めているが、選択科目にとどまり、東京大も文系の数学は選択制だ。

 15歳を対象に経済協力開発機構(OECD)が行う国際学習到達度調査(PISA)の数学的素養で、日本は2000年調査では1位だったが、03年は6位、06年は10位と成績を下げ続けている。

 「分数ができない大学生」(編著)で数学教育の必要性を説いた西村和雄・京都大経済研究所特任教授の話「勇気ある決断だ。よい学生を世に出すことにつながり、社会の信頼を得られる。習熟度の評価を公表すれば追従する大学が生まれ、国の政策にも影響を与えるだろう」

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