(緊急声明) 危機に直面している国立大学!~国立大学法人の運営費(運営費交付金)の確保にご支援を~平成22年9月28日 国立大学法人名古屋大学総長 濵口 道成 

(緊急声明) 危機に直面している国立大学!~国立大学法人の運営費(運営費交付金)の確保にご支援を~

平成22年9月28日

いま日本は、巨額の財政赤字を抱え、不況の中で大きな転機を迎えています。果たして、5年後、10年後の日本は、どんな姿を描くことができるのでしょうか。今私たちの直面している困難は、明治維新、戦後の復興期に次ぐ大きな困難です。資源に乏しい日本にとって、またこの困難があるからこそ、次代の日本を切り開く人材を育てる事、日本の新しい知恵を育てる事が最も大切な事であると思います。今こそ「米百俵」を、次代の人材育成、大学生や大学院生の育成に注がなくてはなりません。しかし、悲しい事に、国立大学法人の運営費(運営費交付金)は、平成16年度から毎年1%の削減が行われてきました。削減額は、名古屋大学で14億円にものぼります。さらに、平成22年度は臨時的減額として1%~1.8%の運営費交付金が減額され、名古屋大学の場合1.8%、4.5億円が削減されました。これらの削減に対して名古屋大学では、一般の管理運営費では対処できず、教員の基礎的研究費を2.2億円もカットしないと対応できなかった状況です。つまり、研究を犠牲にして、大学の運営を維持してきた事になります。

さて、6月22日に閣議決定された「財政運営戦略」の「中期財政フレーム」では23年度から3年間「基礎的財政収支対象経費」は前年度を上回らない方針が示されました。年額1兆3千億円で伸びる社会保障関係経費を踏まえると、その他の一般歳出は削減を余儀なくされ、国立大学法人の予算は、この6年間を遥かに超える巨額の削減となる可能性があります。

しかし、7月27日に閣議決定された「概算要求組替え基準」では、要求額を前年度比10%削減することが各省庁に義務付けられる一方で、削減額のうち「1兆円超を財源に特別枠の要望ができる仕組みとなりました。

この1兆円超の特別枠は、「元気な日本復活特別枠」として「政策コンテスト」により決定されることとされており、各省庁が要望した施策について国民の意見を募り、国会議員や民間有識者による「評価会議」で絞り込み、首相が最終判断するというものです。

特別枠への文部科学省の要望額には、以下の予算が含まれています。

授業料免除枠の拡大
「新成長戦略」の実現に資する新たな教育研究プロジェクトの推進
メディカル・イノベーションを担う国立大学附属病院の教育研究の充実強化
教育研究設備の有効活用の促進
特別なニーズを抱える学生の受入支援強化

私たち国立大学法人は、何としてもこの要望額を認めていただきたいと考えます。なぜなら、これらの予算が認められない場合

奨学金、授業料免除の制度が維持できなくなり、教育の機会均等の崩壊
ノーベル賞受賞者を含む優れた研究者を生み出した教育研究基盤の崩壊

が起きるからです。

これらを大学独自で実施する場合、財政負担が非常に大きいため、これまでの削減で限界にきている教育研究費や教職員の人件費等を更に削減するだけでは大学の運営が維持できず、授業料値上げまでも検討せざるを得ない状況となり、国立大学法人全体の崩壊も危惧されます。また、長期間にわたる不況の中で、苦しい生活を強いられている学生が、大学での勉強を続けることができなくなると心配しています。

さて、政策コンテストを前に、9月28日からインターネットを利用したパブリックコメントが実施されます。文部科学省では、特別枠に10本の政策項目を要望しており、そのうち国立大学法人運営費交付金に関係する政策項目は以下のとおりです。

授業料免除枠の拡大に関する項目
学習者の視点に立った総合的な学びの支援及び「新しい公共」の担い手育成プログラム
教育研究基盤の強化に関する項目
「強い人材」育成のための大学の機能強化イニシアティブ

予算が確保できるかどうかは、パブリックコメントでの国民の皆様の世論にかかっています。是非パブリックコメントにご参加いただき、高等教育の機会均等、次世代の日本を支える人材の育成のために、国民の皆様の積極的なご意見をお願いします。

国立大学法人名古屋大学    
総長 濵口 道成

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