「一律1割減」数字上は帳尻、実現は難題 概算要求基準『朝日新聞』2010年7月24日付

『朝日新聞』2010年7月24日付

「一律1割減」数字上は帳尻、実現は難題 概算要求基準

来年度予算編成の概算要求基準を巡り、野田佳彦財務相は「各省庁とも一律1割カット」を打ち出す方針を固めた。社会保障費の自然増と成長分野に配分する「特別枠」の財源を、一律カットでひねり出す考えだ。これで数字上の「帳尻」は合うが、菅政権が掲げる「大胆な予算の組み替え」が達成できるかは疑問が残る。

野田財務相は23日の記者会見で、同日中に各省庁へ原案を提示したい考えを示していた。だが、仙谷由人官房長官らとの調整が終わらず、省庁への提示は週明け以降に持ち越すことになった。

財務省は当初、特別枠は1兆円規模とする方向だった。社会保障費と地方交付税交付金、「子ども手当」など民主党のマニフェスト(政権公約)案件に加え、反発が強い公共事業費を一律カットの対象から外しても、「ほかの予算内でなんとかやりくりできるのでは」(幹部)と見ていた。

だが、民主党が22日にまとめた予算編成の「提言」では、地方向けの景気対策などを求める意見に押されて、特別枠は2兆円規模に膨らんだ。やりくりは一気に難しくなり、結局、野田氏も「一律カット」の判断に落ち着いたとみられる。

社会保障費の自然増と特別枠の必要額は3.3兆円。公共事業費、文教・科学振興費など約23兆円を対象に1割カットすることで、2.3兆円を確保する。残りは無駄の削減や「経済危機対応・地域活性化予備費」(今年度予算で1兆円)を特別枠などに振り替える考えだ。

ただ、増える金額と減る金額を合わせたところで、あくまで数字上の話。実際の予算編成作業は相当厳しいものになりそうだ。

川端達夫文部科学相は23日の記者会見で「(教職員の人件費など)義務的な費用があり、相当厳しい」と削減の難しさを強調した。

文科省の場合、今年度の文教・科学技術予算は約5.6兆円。そのうち全国に約70万人いる公立小・中学校の教職員の給与を3分の1負担する「義務教育費国庫負担金」が約3割を占める。

財務省は、しぶる省庁側への「アメ」として特別枠に期待する。1割カットに取り組んだ上で、特別枠分を上乗せして要求できるようにする考えで、アイデア次第で新たな予算を獲得することができる。民主党の玄葉光一郎政調会長は「2兆円を(各省庁で)取り合うイメージ」と説明する。

 だが、省庁側にしてみれば思惑通り予算を確保できる保証はない。「削っただけで、新規予算を獲得できず終わる可能性がある以上、本気で削ってくるのかどうか」(財務省幹部)。従来と似たような予算要求を名前を変えただけで、特別枠として要求してくる可能性も残る。(高田寛)

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