募集停止学部の専任教員21人、全員解雇へ 千里金蘭大『朝日新聞』 2010年7月27日付

『朝日新聞』 2010年7月27日付

募集停止学部の専任教員21人、全員解雇へ 千里金蘭大

大阪府吹田市の千里金蘭大学(学生数915人)が、募集停止した人間社会学部と現代社会学部の専任教員計21人全員に希望退職を募っていることがわかった。希望しない教員は今年度末で解雇する方針。両学部には3、4年生計100人が在籍しており、卒業論文の指導などが困難になるおそれがある。大学側は「必要な教員は非常勤などの扱いで再雇用する」としているが、文部科学省は法令違反の疑いがあるとして27日、大学側から事情を聴いている。

同大学は金蘭会中・高校、短大を運営する学校法人金蘭会学園が2003年に開学。生活科学部、看護学部、人間社会学部、現代社会学部の4学部がある。定員割れが続いたことなどから、人間社会学部が08年度に学生の募集を停止し、同年度に新たに現代社会学部を作った。だが、現代社会学部も翌年度から募集を停止。現在、人間社会学部に4年生56人、現代社会学部に3年生44人がいる。

同大学関係者によると、6月29日の全学経営説明会で、法人事務局長が「2学部の専任教員21人全員から希望退職を募った。応じない場合は11年3月末をもって解雇する」と説明した。希望退職の締め切りは7月20日で、約半数が希望したという。残りの教員の一部は退職強要があったとして、地位保全を求める仮処分を大阪地裁に申請する予定。

法人の藤林富郎理事長は「04年度から学生の定員割れが続き、08年度に経営改善5カ年計画を始めた。今、人件費を適正化しないと、大学が立ちゆかなくなる」と説明。その上で「学業に支障をきたさないよう、論文指導に必要な教員は、来年4月に非常勤などの扱いで再雇用したい」と話した。

学校教育法に基づく「大学設置基準」は学部の種類と定員に応じた専任教員(教授、准教授、専任講師)の数を定めている。文科省によると、同大学のケースでは、現代社会学部だけで最少でも11人の専任教員が必要になるという。同省大学振興課は「学生募集を停止していても、学生が在籍し、学部の廃止届けが出ていない段階で、専任教員をゼロにすることは法令違反で、指導の対象になる」としている。

同大学の土肥義胤(よしたね)学長は23日付で「退職勧奨に応じなければ整理解雇または通常解雇という形にも法的問題がある」とする抗議文を藤林理事長に提出した。

大阪中央労働基準監督署によると、今回のケースは労使間の協議が不十分で、解雇権の乱用にあたるおそれもあるという。法人幹部は「再雇用や事務職への配置転換も含め今後、労使で協議していく。解雇権の乱用とは考えていない」と話している。(阿久沢悦子)

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