1~3次救急連携がカギ 弘大救命センターの課題『陸奥新報』2010年7月20日付

『陸奥新報』2010年7月20日付

1~3次救急連携がカギ 弘大救命センターの課題

地域待望の弘前大学医学部附属病院高度救命救急センターが1日、本格稼働した。高度な医療を提供できるほか、医師らの養成機関としての役割にも期待が掛かる。全国の救命救急センターの中には、医師不足や軽症患者の高比率などを理由に崩壊寸前に追い込まれて運営できなくなるケースもあり、今後は1次から3次の各医療機関のスムーズな連携体制や地域住民の協力など、地域医療を守るための課題も多い。

同センターには救急・災害医学講座と各診療科から集めた医師14人を配置し、看護師は院内や新採用の38人が所属する。事前に研修を受け、共通認識やチームワークを磨くなどして開設を迎えた。

ただ、6月15日に開かれた津軽圏域救急医療連絡会議では、救命救急センターを安定的に無理なく運営するための「理想的な医師数は30人」という試算が紹介されるなど、人員はぎりぎりの状態だ。

浅利靖センター長は「人数はぎりぎりのラインだが、運営できないわけではない。周辺医療機関から大学に医師を集めるというのも本末転倒で、地域医療にとっては意味がない」と強調し、現状での運営にベストを尽くす。

同センター稼働前の弘前市の救急医療体制は危機的状況だった。夜間や休日の1次救急は市医師会が運営する急患診療所が対応する一方、最大10病院で運営していた2次輪番病院は、医師不足や厳

しい救急医療体制の実態を背景に5病院にまで半減した。

県内には県立中央病院と八戸市立市民病院の二つの救命救急センターがあったが、津軽地域にはなかった。弘大病院は3次医療機関として重篤な患者を受け入れていたものの、救命救急センターには位置付けられていなかった。

しかし、センターが稼働したからといって患者が一斉に押し寄せると、同センターで本当に重篤な患者が受診できなくなる。

どの程度の患者をどこの医療機関が担うのかといった1次から3次までの役割分担がより重要となり、スムーズな連携の在り方をめぐって関係者の模索が続いている。

市医師会は2、3次に負担を掛けない協力体制を検討中。NPO法人津軽広域救急支援機構は、津軽圏域救急医療連絡会議監修で県医療薬務課と協力して救急医療機関の役割などを掲載したリーフレットを作製。澁谷亨事務局長は「待ちに待ったセンター稼働。うまく機能するためにもコンビニ受診を減らし、正しい救急時の受診方法を市民が知る必要がある」と訴える。

別の関係者は「センターを生かせるかどうかはやってみないと分からないが、安心なシステムができたということを知ってほしい」と話す。

地域救急医療の課題や期待を背負いながらスタートした同センターだが、1次から3次までの医療機関がそれぞれの立場で役割を果たし、最大限の機能を発揮できるかどうかが今後の課題だ。そのためには「地域の最後のとりでは地域で守る」という意識を育てて連携、協力していくことが重要となりそうだ。

【写真説明】本格稼働した高度救命救急センター。津軽地域の救急医療の最後のとりでとして期待されている

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