弘前大・遠藤正彦学長インタビュー「正しい評価でない」「プライドの問題だ」『朝日新聞』青森版2010年5月18日付

『朝日新聞』青森版2010年5月18日付

弘前大・遠藤正彦学長インタビュー

■遠藤正彦学長インタビュー「正しい評価でない」「プライドの問題だ」

法人化した国立大の予算に差をつけるため、国が教育・研究などを対象に行った初の評価で、全体の「点数」が最も低かった弘前大の遠藤正彦学長(73)が、朝日新聞のインタビューに応じた。遠藤学長は教員の意識などを弘前大の弱点と指摘しつつ、評価結果に対しては「弘前大の努力が反映されていない」と改めて異議を唱えた。(聞き手・大西史晃)

――86の国立大の中で最も評価が低かったことを、2004年度の法人化前から大学を率いてきた遠藤学長はどう受け止めていますか。

「負け犬の遠ぼえになってしまうが、正しい評価ではない。法人化に伴い、各大学が定めた中期目標・中期計画の期間である04年度からの6年間で評価するべきなのに、(国は最初の4年間での暫定評価をしてしまい)最後の2年間に実施した事務組織の見直しなどが今回の評価には反映されていない」

「法人化のスタートラインに立った時、東大などはずっと先を走っていた。競争は当たり前だが、そうした『ハンディ』も考慮しないと正しい評価にならない。今は格差を背負ったままの状況だから、どうしようもない」

「弘前大ほど基盤整備を進めた大学が他にありますか。国から(国立大の)機能別分化を求められる中、地方の大学として地域に密着したテーマを決め、新エネルギーや被曝(ひ・ばく)医療などに力を入れてきたし、関連の施設も整備した。人材の手当も自前でやった。こうした努力も今のルールでは評価に反映されない」

――遠藤学長は3月30日、評価に対する意見書を文部科学省に送りました。何を伝えたかったのですか。

「泣き言ですよ。評価自体には反対しないし、学内には『競争の時代だ』と言っている。弘前大は法人化のメリットを生かし、一生懸命やってきた。しかし、国は大学院博士課程の定員充足率が低いから定員を適正化しなさいと要求する。そういう規制につながることを評価の中にいっぱい書かれると、自由な発想で競争するという法人化の良さも阻害されてしまう」

――ただ、東北6県の7大学で比べても弘前大は総合評価ウエイトが35点台で、一つ上の宮城教育大に4ポイントの差をつけられています。弘前大に足りない点は何ですか。

「みんなが法人化したという共通認識を持っていない。科学研究費補助金の獲得が伸びていないと鼓舞しても『ああ、そうか』と思う教員とそうでない教員がいる。学長の泣きどころ。地方の大学の教員と中央の大学の教員に物質的な格差だけでなく、意識の格差があるのが現実だ」

「医学系などの評価が低かったのは、取り組む項目を多く設けすぎた点が影響した。(評価の基礎となる)自己評価も厳しすぎた。理想が高かったのかもしれない」

――一般競争入札の導入率など、「経費削減」の視点で内閣府が行った施設管理業務の改善度の評価でも、86大学中72位と点数が低い。

「一般競争入札だと、県外の企業がどっと入ってくる。全部を入札にし、複数年度契約にしたら、地元企業の仕事はなくなる。だからこそ私たちは小さい仕事に分けて単年度でもやっている」

――今回の評価で、運営費交付金が700万円減らされることになりました。

「金額の問題ではない。プライドの問題だ。法人化後、私たちは日本一の地方大学になるという意気込みでやってきたのに、全然違う結果で、釈然としない。他の大学との相対的な評価をするのではなく、ゼロからどれだけ進歩したかを評価したら、私は弘前大が日本一と思っている

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