旬に聞く:福島大副学長:清水 修二さん『朝日新聞』福島版2010年5月10日付

『朝日新聞』福島版2010年5月10日付

旬に聞く:福島大副学長:清水 修二さん

●「知の連合」で地域に貢献

県内には16の大学、短大、高専がある。これらが連携して人材育成などに取り組む「アカデミア・コンソーシアムふくしま」が本格始動した。少子化が進み「大学全入時代」を迎える中、コンソーシアムではなにを目指すのか。代表校・福島大の清水修二副学長に聞いた。(井上亮)

――アカデミア・コンソーシアムとは何ですか

「高等教育機関などが連携した『知の連合体』です。それぞれが持っている知的資源をお互いに活用し、また地域で様々な事業を展開していきます」

――「ふくしま」ではどのような取り組みをするのですか

「教育・研究・地域の連携を進め、学術的な面から地域貢献を目指します。福島だけではありませんが、地方自治体や経済団体が会員として参加していることが特徴だと言えます」

――これまでも県高等教育協議会で大学などが連携していましたが、何が違うのですか

「協議会の具体的な事業は単位互換くらいで実績も多くありませんでした。これからは『事業体』として活動します。例えば、高校と大学が連携して、ミスマッチにならないような進学指導をする事業があります。6月には、地元の大学に進学することの利点や卒業後に考えられる就職先などをまとめた冊子を県内の高校1年生、約2万人に配る予定です。また、県内の地域課題、企業の課題に応えられるようなシンクタンク機能を発達させて、それを事業として展開する中で財政基盤も確立させたいと考えています」

――「ふくしま」を設立することになった背景はなんですか

「直接的には2009年度に文部科学省の『大学教育充実のための戦略的大学連携支援プログラム』に採択されたのがきっかけですが、大学全入時代を迎え、学生の学力問題が深刻に問われているなか、高等教育機関にとっては『連携』が死活的な課題になりつつあります」

――県外に進学する高校生が多いようです

「県内の18歳人口に対する進学者数の割合(08年度)は20.5%。これは高等教育機関の収容人員を表すのですが全国で下から2番目です。つまり、収容能力がそもそも低いのです。そのうえ首都圏の吸引力が強く、県内の高校生の進学先で一番多いのは東京というのが現実。県内の大学などで小さなパイを取り合うのではなく、全体として進学者を増やすという発想が重要です」

――「ふくしま」は学生の東京への流出を止めるという意味もあるのですね

「地元の大学に行けば地元で就職する確率が高くなるので、いい人材の育成・確保につながります。県の経済界にとってもいいことです。単に大学などの経営のためではなく、県内に優秀な人材が定着するために効果を発揮できると思います」

◇しみず しゅうじ:1948年、東京都台東区生まれ。京都大学大学院を修了後、福島大経済学部の助教授に就任。経済学部長などを経て2008年から理事・副学長(学務担当)。「ふくしま」では企画運営委員会委員長。

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