豊かで活力ある国民生活を目指して~経団連 成長戦略 2010~ 2010年4月13日 (社)日本経済団体連合会

 

 

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豊かで活力ある国民生活を目指して~経団連 成長戦略 2010~

2010年4月13日
(社)日本経済団体連合会

【 概要 】(PDF形式)

【 本文 】(PDF形式、129ページ、2.06MB)

本文の目次は以下のとおり

I.はじめに
1.デフレに苦しむ日本経済
2.今後の経済政策のあり方

II.成長戦略を策定・実行していくために必要な4つの視点と基本的な経済政策の3つの柱
1.成長戦略策定・実行にあたって必要な4つの視点
(1)企業の国際競争力の強化を通じた雇用創出
(2)需要面と供給面、大企業と中小企業を一体的に捉えることの重要性
(3)税・財政・社会保障の一体的改革の必要性
(4)パブリック・イノベーションの推進
2.基本的な経済政策の3つの柱
(1)国際競争力の維持とさらなる強化
(2)新しい内需の連続的な創出と成長力の強化

規制・制度改革の推進
道州制と「地域主権」改革の推進
企業活動の円滑化に向けた戦略的な環境整備
成長を支える金融市場の整備

(3)柔軟性とセーフティネットを兼ね備えた労働市場の構築

III.成長の実現に向けた6つの戦略と規制改革
1.環境・エネルギー大国戦略
(1)最先端の技術の普及促進に向けた政策
(2)中長期的な観点からの革新的技術の開発・普及
2.健康大国戦略
(1)医療・介護関連産業の成長産業化
(2)高齢者向けビジネスの展開
3.アジア経済戦略
(1)アジアとともに成長する日本
(2)経済社会の活性化に資する外国人材の積極的受け入れ
(3)物流の円滑化
(4)国際標準化の推進
(5)コンテンツ産業のさらなる振興
4.観光立国・地域活性化戦略
(1)観光立国の推進
(2)道州制と「地域主権」改革の実現に向けて
(3)成長の牽引役としての都市の再生
(4)農業の成長産業化
(5)ストック重視の住宅政策への転換
5.科学・技術立国戦略
(1)イノベーション創出基盤の整備
(2)ICTの利活用
(3)宇宙開発利用の推進
(4)海洋分野の新たな成長基盤の構築
6.雇用・人材戦略
(1)労働力人口の減少への対応も見据えた労働市場の形成
(2)安心して子どもを生み育てられる環境の実現、待機児童の解消
(3)質の高い教育による厚い人材層の形成
7.成長を阻害する規制の改革

IV.成長戦略にかかわる税・財政・社会保障の一体改革
1.基本的考え方
2.財政分野
(1)成長戦略の実行を通じた名目成長率の引き上げ
(2)歳出重点化・合理化努力の継続
(3)歳入構造改革の推進
3.社会保障分野
(1)社会保障の横断的な将来像を見据えた改革の推進
(2)雇用の多様化・流動化に対応したセーフティネットの再構築
4.税制分野
(1)消費税の拡充
(2)所得税の再分配機能の回復
(3)法人実効税率の早期引下げ等
(4)社会保障・税共通番号制度の早期導入

V.おわりに

【 別添資料 】
成長を阻害する規制の例(戦略分野別)
1.グリーン・イノベーションによる環境・エネルギー大国戦略
2.ライフ・イノベーションによる健康大国戦略
3.アジア経済戦略
4.観光立国・地域活性化戦略
5.科学・技術立国戦略
6.雇用・人材戦略


新首都圏ネット事務局による抜粋

(略)

Ⅱ.成長戦略を策定・実行していくために必要な4つの視点と基本的な経済政策の3つの柱

(略)

1.成長戦略策定・実行にあたって必要な4つの視点

(略)

(4)パブリック・イノベーションの推進

(略)

従来、イノベーションは、狭義の意味でとらえれば、科学技術の革新が中心であったが、新しい時代にあっては、それに加え、斬新な政策手法や社会の意識改革まで含む、広義のイノベーションが必要となる。イノベーションは、政府の政策によって促進されることもあれば、逆に阻害されることも少なくない。政府は、経済社会の情勢変化に伴い意義が薄れた規制、技術革新により実効性を失った規制、さらには、自由な企業活動や効率的な資源配分への妨げとなるだけでなく、必要以上の負担につながる規制を撤廃するなど、政策をゼロベースで不断に見直すとともに、前例主義を排して斬新な政策手法を取り入れていくこと(パブリック・イノベーション)を通じ、新たなイノベーションを促進するよう努めるべきである。それを実現するための手段としては、「Ⅲ.成長の実現に向けた6つの戦略と規制改革」で指摘するように、情報公開による開かれた政府や行政改革と一体となった電子行政の実現(図表2-8)をはじめ、足もとで伸び悩んでいるPFIを運営重視型事業の拡大やPFI独自の入札等制度の創設などを通じて拡大を図ることや(図表2-9)、市場化テストの一層の推進に向けた政府の取り組み強化(図表2-10)、道州制の導入による「地域主権」改革の推進などが重要である。

(略)

III.成長の実現に向けた6つの戦略と規制改革

(略)

5.科学・技術立国戦略
(1)イノベーション創出基盤の整備

 

(基本的な考え方)

科学・技術を基点としたイノベーションは、中長期的な経済成長の源泉であるのみならず、地球環境問題や健康の維持・増進等の国家的な課題の解決に向けた鍵を握る。世界同時不況の影響を受け、欧米アジアの主要国は成長力強化等に向け、総合的なイノベーション政策を強化し、科学技術等の関連予算を拡充している。

他方、わが国は依然として、科学・技術の振興を目的とした施策が中心であり、政府研究開発投資も民間企業の負担に比べ低水準にある、また予算が省庁縦割りで効率が悪いなど、多くの課題を抱えている。現状のままでは、わが国の国際競争力は相対的に低下していくことが懸念される。

わが国として、科学技術政策を基本に、人材育成、知的財産政策、規制改革等を一体的に捉えたイノベーション政策への転換を図るとともに、成長を支えるナショナル・イノベーション・システムの抜本的強化が求められる。

(基本方針に盛り込まれている目標や施策)

こうした中、基本方針では、科学・技術においては、2020年までの目標として、前述の「グリーン・イノベーション」と「ライフ・イノベーション」に加え、「独自の分野で世界トップに立つ大学・研究機関の数の増」、「理工系博士課程修了者の完全雇用」、「中小企業の知財活用の促進」、「官民合わせた研究開発投資をGDP比4%以上」を掲げ、主な施策として「大学・公的研究機関改革の加速、若手研究者の多様なキャリアパス整備」、「イノベーション創出のための制度・規制改革」を図ることとされている。

(目標の達成、施策の充実に向けた具体的な提案)

まず第1は、総合的なイノベーション政策の推進が求められる。具体的には、「科学・技術・イノベーション戦略本部」(仮称)の設置による司令塔機能の強化をはじめ、政策課題の実現に不可欠な研究開発(いわゆる目的基礎研究、最先端技術開発、基盤研究等)への資源配分の拡充とポートフォリオ化(研究開発の最適な組み合わせ)、産学官協働による研究・技術、国際標準化等にかかる戦略の策定・推進を可能とする場(産学官共有のプラットフォーム)の構築、イノベーション指向の研究開発拠点の集約化・ネットワーク化、複数技術の融合や規制改革等を組み合わせた「社会システム実証」の推進等が求められる。

同時に、企業、公的研究機関、大学のイノベーション創出力の強化に向けて、ハイリスク研究に対する支援強化、産学連携に対する競争的資金の拡充、研究開発ベンチャーの支援、国策遂行の観点からの公的研究機関の再編・統合と組織目的に応じた資源配分・運営形態の抜本的見直し、基盤的経費における大学の特色に応じた評価に基づく競争原理の導入、大学の国際競争力の向上とそのための自助努力を促すようなガバナンスの見直し等を推進すべきである。

さらに、官民合わせた研究開発投資の対GDP比4%以上の安定的確保に向けて、政府研究開発投資の対GDP比1%実現が不可欠である。

第2は、高度理工系人材の育成と多様なキャリアパスの整備である。具体的には、イノベーションを牽引する優れた若手を社会に輩出する場として、大学・大学院の果たす役割が重要との認識の下、幅広い知識を得られる体系的コースワークの構築、博士の質を高く維持するための評価の充実と入口・出口管理の徹底等が必要である。また大学と企業との人事交流等を通じて、学生はもとより、まず教員自身が産業界を理解し、学生に対するキャリアパスの指導において必要となる知識を得ることが求められる。

第3は、中小企業の知財活用を含めオープン・イノベーションを促進する知的財産制度の整備が必要である。具体的な対策として、異分野・異業種の協調による知の創造力の強化に向け、ソフトIPの検討等を通じた柔軟な特許制度の設計、職務発明制度の再改定の検討をはじめ特許制度のリスク要因の是正、デジタル化・ネットワーク化に対応した複線型著作権法制の整備等を推進する必要がある。

同時に、社会への実用化・普及を促進すべく、ライセンス・オブ・ライトの検討等をはじめ多数参加を促進する制度の整備、通常実施権の第三者対抗制度の改善等によるライセンシーが安心できる制度整備、営業秘密に関する刑事訴訟制度の見直しや知財法曹人材の育成等を通じた司法の充実が求められる。

(略)

6.雇用・人材戦略

(略)

(3)質の高い教育による厚い人材層の形成

(基本的な考え方)

少子化が進む中で、わが国の未来を切り拓くことができる自立した人材の重要性が増すことは明らかであり、そのような人材の礎は、基本的には初等・中等教育で築かれるものである。しかし、教育現場における教員の指導力や実践力等の衰退、子どもの学力・思考力の低下など、数多くの課題が指摘されている。

一方、わが国の経済社会を支え、活性化に貢献する人材を、高等教育を中心に育成していくことは、今後とも必要である。企業活動のグローバル化が進展する中にあっては、とりわけグローバル化に適応できる人材や理工系・技能人材など、その育成・確保は、競争力に直結する極めて重要な課題である。

加えて、多様な価値観・発想力による経済社会の活性化や、企業の国際競争力の強化という観点から、ICTや研究開発、金融、商品開発、海外事業展開等で活躍が期待される高度人材を積極的かつ継続的に受け入れていくことが求められる。とりわけ、将来の高度人材となり得る留学生の受け入れを、質の面にも留意しつつ、大幅に拡大していくことが不可欠である。

さらに、産業という視点では、教育サービスは、国内では少子化が進行する中において、関連市場の縮小が見込まれている。

(基本方針に盛り込まれている目標や施策)

こうした中、基本方針では、質の高い教育による厚い人材層の形成を目指し、初等・中等教育では、国際的な学習到達度調査において、日本が世界トップレベルの順位となることが目指され、また、高等教育では、未来に挑戦する心を持って国際的に活躍できる人材を育成することが掲げられている。さらに、教育に対する需要を作り出し、これを成長分野としていくため、留学生の積極的受け入れとともに、民間の教育サービスの健全な発展を図ることとされている。

(目標の達成、施策の充実に向けた具体的な提案)

そこで、まず初等・中等教育では、すべての子どもたちが、学校、とりわけ公立学校を中心に質の高い教育を受けられることが望まれる。そのためには、学校選択制の拡大や学校評価・教員評価システムの充実によって、教員や学校、教育委員会が切磋琢磨しながら、学校運営や授業改善に向けて創意工夫するための環境整備を図ることが重要である。同時に、子どもの基礎学力の向上や応用力・実践力の強化など、一人ひとりの可能性を最大限引き出していけるよう、教員の質のさらなる向上、教育の質的改善を、企業をはじめとする地域との連携を図りながら、一刻も早く進めていく必要がある。

また、大学等の高等教育機関においては、グローバル化に対応して、国際化対応能力を含めた教養等を深める教育の充実を図ることをはじめ、企業のニーズ等を踏まえた実践的な教育内容の拡充とそのための産学連携の強化、学生の勤労観や職業観を育むとともに就職のための適切な支援を行うキャリア教育の充実、入学時から卒業までの期間を通じた成績評価に基づく学生の質の担保、卒業生や就職先へのアンケート結果などの大学評価の予算への反映、世界トップレベルの教育・研究拠点を目指し実績を上げる大学への積極的支援、道州制を念頭においた地域内の大学の機能に応じた再編を図るべきである。また、人材育成の上で重要な高等教育段階においては、家計の教育費負担が最も重くなることを踏まえると、例えば教育資金積立への税制優遇など、家計負担を軽減し、自助努力を支援するような制度整備が求められよう。

同時に、わが国企業の競争力を高めていくためには、高度な研究や技術開発を行う理工系人材を育成していくとともに、生産現場を担う技能人材の確保も同時に進めることが求められる。そのためには、初等中等教育段階から、理科授業の充実や、実験・実習の拡充を通じて、理工系学問やものづくりへの関心を高めるとともに、就業環境の魅力向上を図ることが重要である。

さらに、教育に関する需要を作りだすという点については、まず、海外の優秀な人材を国内の大学等で受け入れる戦略的な留学生受け入れ政策が求められる。わが国では留学生数は緩やかながら増加しているものの、留学生が高等教育機関の在籍者に占める割合は欧米先進諸国に比べて低い状況にある(図表3-18、19)。今後は、受け入れ先である大学・大学院等が、理工系・文科系を問わず、教育・研究のグローバル化を進めるとともに、関係機関が連携して留学に関する情報を積極的に提供することなどを通じて、優秀な留学生の獲得に主体的に取り組むことが重要となる。また、留学生への奨学金の充実、学業との両立を目指した大学内の業務に従事し収入を得られる仕組みの構築、宿舎の確保等、留学生が安心して勉学に専念できる環境づくりを推進することも求められる。さらに、質の高い留学生が、卒業後も引き続き、日本国内で活躍できるよう、日本語・企業文化の理解促進、就労環境の整備等に努めるべきである。また、わが国では理工系学生に対する求人が比較的多いが、留学生全体に占める理工系専攻者の割合は国内学生よりも低いことから、理工系を専攻する留学生を増やす必要がある。例えば、将来的に留学生を30万人に増やす場合には、理工系留学生の数を7万人程度にすることが考えられる。

また、民間の教育サービスの発展という点では、とくに、高成長が続く中国等の新興国において、所得の増加等に伴う中間所得者層の拡大によって、教育への需要拡大が期待されていることから、わが国教育関連企業にとっては、国内で培ってきたノウハウを活かし、商機を拡大するチャンスともいえる。実際、中国人向けの教材開発や、現地邦人向けの学習塾の開設等、既に海外に進出する例も見られており、政府としては、各国市場における参入規制緩和への働きかけ等、企業の取り組みを後押しするような支援策が求められる。

(略)

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