大学進学に不況の影 国公立志向 一層強まる 読売新聞岩手版2010年4月8日付

読売新聞岩手版2010年4月8日付

大学進学に不況の影
国公立志向 一層強まる

長引く不況が大学進学にも影響を及ぼしている。今春の受験では、国公立大志向が一層強まり、浪人するリスクを避けて、より確実に合格できる大学へと志望を変える動きが目立った。

県南の進学校、一関一高では卒業生247人のうち、例年より1割ほど多い6割以上の152人が国公立大に合格した。及川研一進路指導主事(49)は「卒業生のうち、ここまで国公立大の合格者の割合が多いのは、過去20年間で初めてでは」と驚く。進学先も、関東の国公立大より、東北の大学を選ぶ生徒が増えた。「学費を抑えるため、近場の国公立大に確実に受かろうとする動きが強かった。浪人を選ぶ生徒も減った」と、及川主事は説明する。

盛岡一高でも、国公立入試前期で第1志望を受け、後期で合格安全圏の大学に変更する動きが広まった。私立大の併願も減り、受験先を国公立だけに絞った生徒も1クラス10人以上と、例年の2倍になった。及川浩純進路指導主事(47)は「従来は、私立大に『受かっても行かせられない』という保護者が多かったが、今春は『そもそも受けさせられない』という状態だった」と明かす。

7日に行われた岩手大の入学式でも、こうした状況を反映した新入生がいる。 「学費の安い国立大に行きたかったので、岩手大を受験することに決めた」と話すのは、教育学部に入学した盛岡市の男子学生(18)。当初、東北大を目指していたが、センター試験後に切り替えた。私立大も考えたが、兄弟もいるため、家計に負担をかけるのを避けたかったという。

別の新入生の母親(44)は「息子には後期も第1志望を受けさせたかったが、国立以外は学費面で難しい」と、受験を振り返り胸の内を明かす。

もちろん、この日を笑顔で迎えた学生も多い。一関一高出身で教育学部の及川智博さん(18)は「将来は岩手で教員になりたい。地元の伝統大学に入れたのはうれしいし、親の期待に応えられた」と喜ぶ。

岩手大によると、今年の出願者数は前年より約2割減ったが、これはセンター試験が難化したことが一因とみられ、「大学への相談数やホームページアクセス数は非常に多かった」(入試課)という。

盛岡市の大手進学塾は、「親の収入が減る中で、国公立大志向は県内全体で強まっている。今後もしばらく続くだろう」と分析する。優秀な学生が首都圏に流れず県内に多く残ることになり、「県内の大学のレベルも上がる。岩手大は研究にも定評があり、地元の大学でしっかり勉強する学生がさらに増えるのではないか」と話している。

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