研究の無駄削減 若手が提言 『東京新聞』2010年3月2日付

『東京新聞』2010年3月2日付

研究の無駄削減 若手が提言

行政刷新会議の事業仕分けで厳しい視線が注がれた科学技術予算。若手研究者らグループが、現在の研究体制には無駄を生む構造があると認めた上で「より効率的で合理的な研究システムをつくろう」との提言をまとめた。反省を踏まえて無駄削減の具体策を盛り込んだ内容で、総合科学技術会議の専門調査会でも取り上げられるなど反響を呼んでいる。

提言は、神経科学や脳科学の研究者を対象にした会員制交流サイト「神経科学者SNS」の有志がまとめた。昨年秋の事業仕分けを機にネット上で議論が白熱。科学技術研究の問題点を明らかにしようとアンケートをしたところ、約百七十人から回答があった。

一年間で区切る現行の「単年度予算」が無駄を生む原因で、複数年度予算の導入が必要と答えたのは94%。大学や研究機関には無駄な事務手続きや書類作成が多いと感じているのは97%に上った。

予算を翌年度に繰り越す制度はあるが、認められないケースもあり、利用は進んでいないのが実態という。年度末には「研究費を使い切るよう事務から指導がくる」「不要な物や高額な分析機器などを購入することも多い」といった声が寄せられた。

解決策としては、三~五年程度の複数年度予算とする案のほか、余った研究費を国に返すことによってメリットが得られる評価制度の導入などを挙げた。「研究費が潤沢な研究室では最先端の機器を頻繁に買い替えるケースがある」とし、中古機器のオークションなど再活用の仕組みを検討するべきだとした。

事業仕分けについては、無駄とされた対象が適切でないとした上で「大学や研究機関の在り方や研究費配分の過程に無駄はないかという根本的な問い掛けがなされた」と評価。「研究の意義を日ごろから政治家や国民に説明することの重要性を痛感した」とし、ベテランから若手も含めた多くの研究者が知恵を集め、科学技術政策に反映させられる仕組みが必要と訴えている。

世話人の宮川剛・藤田保健衛生大教授は「米国科学振興協会のように、高名な学者だけでなく誰でも参加できる分野横断的な研究者組織が日本にも必要だ」と話している。

一方、このような分野横断的な研究者組織を発足させようとの動きも出てきている。若手の研究者らでつくる「サイエンス・サポート・アソシエーション」(任意団体)は七日、都内で初の研究会を開く。科学技術政策の在り方などを議論し、将来的には分野横断的な研究者組織につなげることを目指すという。

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